組織の専門家が実践したチーム立ち上げの掟 組織人事コンサルタントから転向したデザイナーが解説

組織の専門家が実践したチーム立ち上げの掟 組織人事コンサルタントから転向したデザイナーが解説
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 本連載のテーマは「チームの壁」。リンクアンドモチベーションで中小ベンチャー企業向けの組織人事コンサルティングに従事し、そののちデザイナーへと転向した辻井さんがチームづくりにおいて陥りがちな落とし穴や心がけるべきポイントをお伝えします。初回は「チーム立ち上げ」についてです。

 みなさん、はじめまして。リンクアンドモチベーションでUIUXデザイナーをしている辻井です。

 新卒でリンクアンドモチベーションに入社してから5年半、中小ベンチャー企業向けの組織人事コンサルティングに従事してきました。具体的には理念策定や制度改革、採用戦略の立案・実行支援といった業務です。

 インハウスのデザインチーム発足にあたって声がかかり、完全未経験から職種を転向。長年プロダクト開発にご尽力いただいているパートナーデザイナー(業務委託)の方々と二人三脚でチームを立ち上げ。たくさんのサポートをいただきながら、2名でスタートしたインハウスチームも4名まで拡大しました。

 本連載では「チームの壁」をテーマに、チームづくりにおいて陥りがちな落とし穴や、心がけるべきポイントを「処方せん」としてお届けしていきます。コンサルタントとしての「知見」と、チームづくりの当事者としての「実践」を、織り交ぜながら発信していきます。

  • チームを立ち上げてみたものの、チームビルディングがうまくいかない
  • ひとりひとりは一生懸命頑張っているが、なかなか成果につながらない
  • チームの文化を作っていきたいが、どうすればいいかわからない

 そんな“あるある”な課題への解決策をお伝えしていきます。デザインチームに所属する方はもちろん、新たにチームを立ち上げたり、チームづくりに携わる方に読んでいただければ嬉しいです。

チームが成立するための3つの要素

 第1回となる今回は、「チーム立ち上げ」にフォーカスします。

 突然ですが質問です。「チーム」と「グループ」の違いは、なんだと思いますか?(「組織」と「集団」と置き換えてもいいでしょう)

 古来からさまざまな定義がされていますが、ここでは20世紀を代表する経営学者のひとりである、チェスター・バーナード氏の定義に則って話を進めます。※出典:チェスター・バーナード『経営者の役割』(ダイヤモンド社、1968年)

 バーナード氏は、チーム(組織)が成立するためには、3つの要素が必要であると論じました。その3つとは、「共通の目的」「協働意思」「コミュニケーション」です。具体的にどういうことなのか、見ていきましょう。

 あなたがひとりでバスに乗っているとします。乗り合わせた乗客が何人かいますが、全員面識はなく会話もありません。これは、「乗客の集団」であって、チームや組織と呼べる状態ではありません。

 そこで、急病人が発生したとします。すると、乗り合わせた人たちの間で、この人を助けなければ!という「共通の目的」が生まれます。そして、周囲と協力してこの人を助けようという「協働意思(=協力するモチベーション)」が芽生えます。すると、倒れた方に声をかけ、運転手に協力を仰ぎ、119番通報をして……と役割分担をする必要が生じます。この時に発生するのが、それぞれの役割をすり合わせるための「コミュニケーション」です。

 このように、「共通の目的」が明確に定義され、その達成に向けた「協働意思」をひとりひとりが持っており、それらの共通認識を紡ぐための「コミュニケーション」が存在して初めて、組織(チーム)が成立するとバーナード氏は定義をしています。

 この3要素は、どんな領域でいかなるチームを作るときにも、必ず求められるものです。ここからはこの3つの観点に沿う形で、チーム立ち上げの「掟」と「べからず集」を整理していきます。

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