半歩先をいく優しさをもって前に進む デザイナー数50人以上のマネーフォワードでCDOが心がけていること

半歩先をいく優しさをもって前に進む デザイナー数50人以上のマネーフォワードでCDOが心がけていること
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2022/02/04 08:00

 CDOやCXOとして活躍するクリエイターに日々の取り組みや課題などについて取材することで、クリエイティブのこれからを考える本コーナー。第3回は、マネーフォワードのCDO(Chief Design Officer)伊藤セルジオ大輔さんにお話を伺いました。

B向けC向け問わずサービスは40以上 デザイナーの声で生まれたデザイン戦略室

――まずは、CDOになった経緯からお聞かせいただけますか?

マネーフォワードにジョインする前は、10年ほど、ブランドやデジタルプロダクト、UI、UXといったデザインを生業とする会社を経営していました。その中で2018年にマネーフォワードが新規事業をスタートするのですが、当時の社内にはそれほどデザイナーが在籍していなかったため、外部のデザイナーとして私の会社に声をかけてもらったことが、ファーストコンタクトです。そのため最初は私の会社がマネーフォワードのプロジェクトを受託し、一緒にさまざまな仕事を進めていたのですが、その途中で「社内のデザインも手伝ってほしい」と声をかけてもらって……。それを機に、2019年ごろから業務委託のかたちで週1~2日ほど通うようになり、いつの間にかフルコミットしていました(笑)

CDOのオファー自体は2019年より前にいただいていたのですが、僕も自身が経営している会社で働いている社員やクライアントさんもいたので、二の足を踏んでいた部分がありました。そんな気持ちが変わり始めたのが、2019年の1月ごろ。最終的にCDOを引き受ける2020年の9月までの1年半でいろいろなメンバーと関わり、それが純粋にとても楽しくなってきたことがいちばん大きい要因かもしれません。

またそのころ、ちょうど世の中がコロナ禍になりましたよね。マネーフォワードは、お金や社会問題、働きかたや企業のDX推進に関わるサービスが多いので、そういった意味でもマネーフォワードが社会に求められていることを感じるようになりました。僕もそこでデザインを活かしていきたいと思ったことも、CDO就任を決めた理由のひとつです。

――マネーフォワードのデザイン組織体制について教えてください。

マネーフォワードというと家計簿アプリ『マネーフォワード ME』を思い浮かべていただくケースが多いと思うのですが、BtoCに限らずBtoBの『マネーフォワード クラウド』をはじめ40以上のサービスがあります。そうするととくに、各事業やサービス、ユーザーをデザイナーが理解することが大切なので、基本的には事業部ごとにデザイン組織を置いています。会社全体としてはカンパニー制を導入しているため、社内には複数のデザイン部が存在している状態です。

マネーフォワードとして在籍しているデザイナーの人数は50人ほど。こういった規模感になると横の連携やデザイナー全体に関わる中長期的な取り組みがどうしても漏れてしまいがちなので、それを解決するためにデザイン戦略室という横串の組織を設置。各デザイン部の部長と副部長がデザイン戦略室を兼務する構造になっています。

株式会社マネーフォワード 執行役員CDO デザイン戦略室 室長 伊藤セルジオ大輔さん
株式会社マネーフォワード 執行役員CDO デザイン戦略室 室長 伊藤セルジオ大輔さん

このデザイン戦略室をつくったのは、業務委託として関わり始めた2019年1月です。ただ僕が働きかけて組織が立ち上がったわけではなく、各カンパニーを横断した組織のありかたに、各デザイナーが課題を感じていたことがきっかけです。自発的に会議の場が設けられ、デザイナーたちでワークを実施。ですが会議体だけだと実行力に欠けるので組織化しよう、といった流れで、デザイン戦略室のベースはできあがっていきました。

――最初のマネーフォワードのメンバーに対する印象を覚えていますか?

当初から、デザインに対して代表の辻がとても深く理解していることが印象的でした。デザインを、色、形などのビジュアルとしてのみ捉えるのではなく、本質的なものが何かを見極め、それを届ける役割として認識していたので、デザインを広く活用する素地があると感じていました。だからこそCDOという役割をおき、組織として経営レベルからデザインを活用する気概があった。それはCDOとして非常に重要な土台だったと思います。

ただCDOに就任する際、なにか具体的な依頼があったわけではありません。辻は根っからのプロダクト好きでもあるので、感動するようなプロダクトを生み出すためにはデザインが大切だと常々思っていたんですよね。より経営レベルからデザインを組織に息づかせていくことが必要だという認識を持ってくれていた、つまり、デザインをすでに信じてくれていたんです。僕はそのうえで、取り組むべきことを実行していきました。

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