コミックアプリから考える、広告クリエイティブづくり おさえるべき考えかたと検証方法とは

コミックアプリから考える、広告クリエイティブづくり おさえるべき考えかたと検証方法とは
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

 広告におけるクリエイティブノウハウを解説していく本連載では、アイディアを考える際に基本となる「メディア」、「コンテンツ」、「ターゲット」にそれぞれ焦点を当てていきます。第4回ではコンテンツを切り口に、コミックアプリの広告クリエイティブについてお伝えします。

 はじめまして。D2C Rの鈴木雄太と申します。

 前回までの連載では「メディア」や「ターゲット」に焦点をあて、クリエイティブを制作する方法をお伝えしてきました。4回めとなる今回は、多くのユーザーに使用されているコミックアプリというコンテンツに焦点を当て、運用型広告のクリエイティブづくりについてお届けしていきます。

コミックアプリを取り巻く環境

 まずはコミックアプリを取り巻く環境から見ていきましょう。電子書籍ビジネス調査報告書2021によれば、2020年度に国内の電子コミック市場規模が初めて4,000億円を超え、2019年度と比較すると1,013億円もの売上が新たに生まれたと発表しています。またApp Annie社が発表しているモバイル市場年鑑2022によると、2021年の日本における消費支出ランキングの上位ふたつはコミックアプリが占めています。

 現在私たちの周りにはたくさんのコミックアプリが存在しており、広告を目にすることも非常に多いと思います。そのため多くのユーザーがコミックアプリの広告に慣れてしまい、以前より目にとめてもらえないことも増えているでしょう。このように効果改善が難しくなっている今、どのようにクリエイティブを考え、検証していけば良いのでしょうか。

コミックアプリ広告でも大切なクリエイティブのポイント

 コミックアプリ広告はマンガ自体に魅力があるため、クリエイティブづくりも比較的難しくないのではないかと考える方もいるかもしれません。しかし、話題になった作品や昔から人気がある名シーンを広告にすれば良いかというと、もちろんそうとは限りません。映像化されている作品であれば、ユーザーがすでに内容を知っている可能性も高く、ほかの作品よりもCTRが低くなることもあります。

 作品の有名度合いよりも重要なのは、訴求内容が「マンガの要素×刺さるターゲット」で考えられているかです。通常のクリエイティブをつくる過程でターゲットを設定することは重視されていますが、コミックアプリ広告になるとおろそかになってしまうケースもあるのではないでしょうか。

 今回は例題をもとに、刺さるターゲットを定め訴求内容を考えていく方法を紹介します。

オリジナル新作マンガの広告クリエイティブ

背景:コミックアプリの運用型広告を担当している中、オリジナル新作マンガが新たに配信開始となったので広告クリエイティブを制作してほしいとの依頼。新作マンガのため知名度に頼ることや、誰もが知る名シーンを広告にする訴求は難しい。

 このマンガを広告として使用する場合、マンガの要素×ターゲットをふまえ、次のようなふたつの訴求内容が考えられます。

訴求内容1

  • マンガの要素:元ヤン同級生という相手役の属性
  • ターゲット:女性マンガの場合「ヤクザやホストのような、現実世界ではなかなかめぐり会えないような相手役」が人気マンガランキングの上位であることが多い。これは「アウトローの人間が自分だけに優しい」といった非現実的なギャップを求めているユーザーが多数いることが考えられる。そのため今回のターゲットは、現実世界では味わえない魅力が相手役にあるかどうかを気にする人。
  • 訴求:過去のヤンキーだったシーンから、今の自分だけには優しいシーンを1つのクリエイティブにしギャップをみせる訴求。

訴求内容2

  • マンガの要素:優しい色使いや繊細なタッチの絵
  • ターゲット:ソーシャルリスニングを行ってみると、女性はマンガをジャケ買いしている人が多いことがわかった。これはマンガを選ぶ際に、絵柄が自分好みであれば内容がある程度わからずとも読み始めるユーザーが多いことが一因だと考えられる。そのため今回のターゲットはマンガを選ぶ際に絵柄をもっとも重視する人
  • 訴求:大きく絵が見え、作者がとくに力を入れて絵を描いているシーンやクオリティが高い表紙部分を使って訴求。

 このようにターゲットが変わることによって訴求すべき内容が大きく変わります。いくつか出した訴求から、過去の配信結果や母数の多さを想像しながら実際にクリエイティブを決めていくのがコツです。

 ターゲットを定めた訴求を考えることができれば、使用するシーンの選定などに意図が生まれ、広告としても成果を発揮できる可能性が高くなります。また意図が明確であれば成功した要因も分析できるので、ほかのクリエイティブに関しても良い反響を生むことができるでしょう。

 もうひとつ意識するポイントは、ひとつだけではなく、さまざまな形での訴求をイメージしたクリエイティブを準備しておくこと。これはターゲットを含めた訴求が仮説と合っていなかった場合、すべてのクリエイティブがボツになってしまうことを防ぐためです。

※この続きは、会員の方のみお読みいただけます(登録無料)。