メタバースのイメージが湧かないデザイナーが一歩踏み入れてみた話――ユーザー体験とデザインのヒントとは

メタバースのイメージが湧かないデザイナーが一歩踏み入れてみた話――ユーザー体験とデザインのヒントとは
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 今回のテーマは、メタバースとUXデザイン。解説するのは、デジタルプロダクション「factory4」でアプリやさまざまなIoTプロジェクトのUIUXデザインを手がける新谷友樹さんです。

 こんにちは!株式会社Cosmowayが組織するデジタルプロダクション「factory4」のUIUXデザイナー新谷です。今回は、今トレンドワードとなっている「メタバース」について、UIUXデザインの視点から知っておくべきことや、今後のユーザー体験について考察してみました。

 そもそも私自身も「メタバースとは何ができて、どうするものなの?」、「今までの3Dゲームと何が違うの?」とあまりイメージが湧きませんでした。今後この領域に携わっていくためにもデザイナーとして体験しまとめてみましたので最後までお付き合いください。

メタバースとは何か

 最近、やたらとメタバースについてよく見聞きします。「Facebook(フェイスブック)」が2021年10月にメタバースの領域に力を入れるとして、社名を「Meta(メタ)」に変更したことは記憶に新しく、とても注目されましたね。

 

 メタバースとはどういうものなのか。いろいろな定義があると思いますが、この言葉自体は何年も前から存在したものだと認識しています。新しい概念のように思いますが、実はすでに存在するテクノロジーから進化し、それら機能が拡張、集約され「メタバース」の世界、概念として新たに構築されたと言えるのではないでしょうか。

 ちなみに「メタバース(Metaverse)」は、「高次~・超越した」などの意味を持つ「meta」と、「宇宙・世界」を表す「universe」を掛けあわせた言葉になります。SF作家のニール・スティーヴンスン氏が、1992年に発表したSF小説『スノウ・クラッシュ』の中で使用されたのが語源とされているそうです。

出典:Neal Stephenson - Snow Crash

出典:Neal Stephenson - Snow Crash

メタバースで何ができるか

 では、メタバースでは一体何ができるのか。漠然と、ゲームの延長線のようなイメージを持っている方も多いのではないでしょうか。ですがメタバースはゲームなどエンターテイメント領域だけではなく、SNSや小売業、新規事業、PRやマーケティングなど、ビジネスの分野でも活用され始めています。それらのコンテンツの一部を調査・体験してみたので、紹介したいと思います。

渋谷区公認配信プラットフォームバーチャル渋谷

渋谷区公認で運営されているバーチャル渋谷。2020年5月、KDDI・渋谷未来デザイン・渋谷区観光協会を中心とする参画企業(2021年12月時点で73社)で組成する「渋谷5Gエンターテイメントプロジェクト」による立ち上げ以降可動エリアも広げながら、現在もさまざまなイベントが開催されています。

 

2022年1月と2月にはサッカー日本代表のFIFAワールドカップカタール2022のアジア最終予選を観戦するイベントなども開催され、音楽ライブ、ハロウィーンフェスなど、渋谷の街と連携したコンテンツを提供しています。(参考:バーチャル渋谷

リモートで新しいかたちのチームワーク「Horizon Workrooms」

出典:Workroomsの機能 | チームの生産性を高めるツール

出典:Workroomsの機能 | チームの生産性を高めるツール

Horizon Workroomsは、「Meta」が開発しているVRワークスペース、リモート会議用のVRシステムです。バーチャルな空間にアバターとして人が集まり会話するVRの空間に、自分のPCやキーボードをVRの世界の中に持ち込んで、「没入感」や「リアリティ(現実味)」を活かした体験を味わうことができます。

出典:Workroomsの機能 | チームの生産性を高めるツール

出典:Workroomsの機能 | チームの生産性を高めるツール

ホワイトボードの共有ができることで従来のオンライン会議よりも、アイディアを出しやディスカッションを、より密に行うことができます。実際に使用してみると、たしかにZoomやMeetより、その場にいる感覚は強いと感じました。(参考:Horizon Workrooms

VRイベント「バーチャルマーケット」

出典:バーチャルマーケット2021 株式会社ビームス

出典:バーチャルマーケット2021 株式会社ビームス

3Dアイテムや、リアルな商品を売り買いできる世界最大級のVRイベント「バーチャルマーケット」。「BEAMS」がバーチャルショップを出店したことでも話題となりました。

ビームスの衣類はもちろんオリジナルアバターを販売したり、Netflix映画『浅草キッド』と協業した「バーチャル浅草」を再現するなど、さまざまな仕掛けやイベントが開催されました。(参考:バーチャルマーケット2021

出典:バーチャルマーケット2021 株式会社ビームス

出典:バーチャルマーケット2021│株式会社ビームス

 また、『フォートナイト(Fortnite)』や『ファイナルファンタジー14(FAINAL FANTASY XIV)』のようなオンラインゲームでは、バーチャル空間上でコミュニケーションをとることが一般的となっています。フォートナイトでは日本人として初めて米津玄師さんがバーチャルイベントを開催。コロナ禍の時勢もあいまり、その後さまざまなアーティストがバーチャル空間上でライブを開催するなど、プラットフォームとしても活用の幅が拡大しています。

 

 その他、2021年には東京ゲームショーが、PCまたはVR端末でアクセス可能なバーチャル会場として、初めてVR上で開催されました。

 

 トヨタや日産がバーチャルギャラリーをVR空間に再現しビジネスを展開するなど、さまざまな分野で活用が拡大しているメタバース。今後も環境の整備、デバイスやテクノロジーの進化、アイディアによって、メタバースを活用した多様なコンテンツが登場することが予想できます。

 まとめると、メタバースには次のような3つの要素で構成されているのではないでしょうか。

メタバースに関する3つのポイント

  1. 自己投射できる分身となるアバターやアイデンティティの形成
  2. 空間内にコンテンツや価値を生み出し体験を共有することができる
  3. 複数で繋がりインタラクティブなアクションとコミュニケーションができる

 ここにNFTや仮想通貨などさまざまなビジネス的要素が関わるようになると思いますが、今回はメタバースのみにフォーカスして進めていきたいと思います。

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