英語の次が日本語 Figmaが感じた日本市場の可能性
――まず、川延さんがFigmaに加わった経緯について教えてください。
Figmaに入社したのは2022年1月です。私自身、10年以上ぶりの転職だったこともあり、Figmaのユーザー企業であるNetflixの友人に話を聞いたり、自身で使ったり調べたり、さまざまな角度から慎重に検討しました。
自分は次に何をしたいのか、何にエキサイトメントを感じるのか――。これらを改めて考えてみると、2006年~2008年にカナダの学校に通っていた際に起業家専攻だったこともあってか、自分のなかの大きなキーワードが「アントレプレナーシップ」であることに気づきました。
アントレプレナーシップの観点でFigmaをみてみると、非常に恵まれていると思っています。すでに多くの人に受け入れられているプロダクトで、可能性もあり、会社も成長している。僕がゼロからプロダクトをつくる必要はありません。そんななか日本法人はゼロから立ち上げをさせてもらえるのは非常に良い機会だと思いましたし、Figmaが掲げている「すべての人がデザインにアクセスできるようにする」というビジョンにも大きな可能性とワクワクを感じたんです。
カントリーマネージャーという役割自体は前職でも担っていたので初めてではないのですが、すでに私と一緒に働いているメンバーがいて、そのチームを次のステージへともっていくことが求められた前職と違い、今回は日本で言うとゼロイチのフェーズ。会社が置かれているステージも違う。そういった観点からもやはりこれは自身にとってまたとない大きなチャレンジだと思い、挑戦することを決めました。
――Figmaとして、日本の市場をどのように捉えていますか?
一般的なアジアでの展開と言うとはじめはシンガポールからスタートすることも多いのですが、Figmaはアジア最初の拠点として日本を選びました。言語のローカライズも、フランス語でもドイツ語でもなく、英語の次が日本語。こういったことからも、いかにFigmaが日本のマーケットを重視しているかがおわかりいただけるのではないでしょうか。
会社としてデータもありましたし、日本のマーケット調査も行いましたが、2019年11月に幹部含む社員5人が日本に訪れ、ミートアップのイベントなどを通じてユーザーさんの生の声を聞いたことが、日本市場を重視するようになったひとつのきっかけでしょう。それ以外にも複合的な要素が絡まり、日本の市場に対して施策を打たなければいけない、かつ取り組むからには確実にコミットしなければいけないと考えました。入社前にFigmaのメンバーと話した際、会社として日本進出に本気で取り組むんだという気概を感じたことも、私が入社を決めた大きな理由でもあります。
日本のクリエイティブ市場全体としては、非常に可能性があるマーケットだと思っています。ただし、その可能性を最大化するために行わないといけないことがたくさんあるのも事実です。そのひとつの例がローカライズ。外資系企業が日本でビジネスを展開していく上で非常に重要です。
Figmaは直感的に使えるためハードルは低いものの、プロダクト内で使われている言語は英語ですし、困ったことがあったときのサポートもすべて英語です。これって、ハードルが高いと感じる日本の方も多いと思うんですよね。それでも企業、個人問わず使ってくださる方がたくさんいる。そういった部分にマーケットとしてのポテンシャルを感じています。日本の市場により適した形でローカライズしていくことで、さらにその可能性を広げていけるのではないかと考えています。
ウェブから生まれたFigmaの3つの特徴
――Figmaの強みや特徴についてお聞かせください。
大きく3つあります。ひとつは、僕らも「Born on the web」とよく言うのですが、ブラウザ上からスタートしたプロダクトであることです。生い立ちを見てみるとアプリケーションから始まった製品も多いかと思うのですが、Figmaはウェブで生まれ、ウェブでプロダクトをとがらせていった。この入り口が大きく違うと考えています。
ふたつめは、デザイナーが欲している機能がもっともそろっているツールではないかという点です。まだまだやるべきことはたくさんありますが、今ユーザーの求めている機能をいちばん適切に届けることができているプロダクトではないでしょうか。
3つめは、統合できることです。企業や業務のフェーズによって活用するプロダクトが異なるのが一般的ですが、Figmaというひとつのプロダクトに統合することで各々の製品のメンテナンスにかける時間を減らすことができる。メンテナンスする時間を実際の業務に充てたほうが生産性もパフォーマンスも当然上がりますよね。ツールを統合することによって、デザインのシームレス化を実現したことは、Figmaが成し遂げたことのひとつではないかと考えています。