3年で社員数が10倍に 急拡大したheyの組織
登壇したのは、Head of Designの荒木脩人氏、VP of Product Designの井出優太氏、そしてHead of Brand Experienceの松本隆応氏の3名。荒木氏と井出氏はともに2019年入社。松本氏はベンチャーではかなり社歴の長い10年目だ。
heyは「Just for Fun こだわりや情熱、たのしみに駆動される経済を作る」というミッションを掲げ、お商売のデジタル化を支援する「STORES プラットフォーム」を提供している。
ネットショップ開設サービスから、ネットショップと在庫を連携できるSTORES レジ、そのレジと繋げて使うことが可能なキャッシュレス決済の端末。さらには店舗やサービスのオンライン予約システムを、ひとつのプラットフォーム内で提供する。たとえば、オンラインとオフラインの両方に店舗を持つブランドの運営、地方自治体のワクチン接種の予約システムにまでもSTORES プラットフォームが活用されており、その幅はとくにここ1~2年で全国に広がっている。
企業組織としてのheyもここ数年で一気に拡大。2018年から2021年5月までの間に社員数は10倍に増え、現在400名近いメンバーが働いている。
デザイン部門誕生の裏にあったのは「ひとつのデザインチームで動く必要性」
その中でデザイン組織は何を見据え、どのように変化してきたのか。荒木氏は「たいそうなことを成し遂げたという話ではなくて、日々難しいなと思いながら取り組んでいることを話したい」と前置きし、デザイン組織の変遷を紹介した。
heyはもともとホールディングスで、それぞれのプロダクトが子会社として紐づいていた。2018年の時点ではSTORES.jpとCoineyというふたつのプロダクトがあり、2019年にSTORES レジなどを含めた新規事業に着手。2020年にSTORES ブランドを統合し、2021年に会社も統合を行い「hey」になった。
2019年1月頃は、登壇者3名それぞれが各会社(プロダクト)のCEOの直下で動いており、横のつながりはまったくなかった。
「『それぞれ頑張れ』というスタイルだったので、他事業のデザイナーが何をやっているかあまり知らず、たまにランチで話すくらいでした」(荒木氏)
変化が生まれたのは2020年6月、ブランド統合のタイミングだ。当時を荒木氏は「まだ会社の統合は発表される前で、経営陣から体制について言われたわけでもありませんでしたが、一緒に取り組む必要性を感じて先に動き出しました」と振り返る。まずは、複数の事業がある中でひとつのデザインチームとして動くことのメリットと課題について3人で議論し、認識を合わせたと言う。
まず考えたのは、「ひとつのプラットフォームとして、デザイン品質の水準を揃え、横断的に体験を設計していくことがもっとも効率が良い」ということだ。アサインメントは、デザインチームのリソース配分についての課題であり、「偏りがあったので、全体でならすともっと良い状態になるはず」だと仮説を立てた。一方マネジメントコストに関しては、チームがバラバラだと、当時少なかったマネージャーをどのように配置するか難しかったと言う。
これらをふまえた結果、ひとつのデザインチームで取り組んでいく方向性に決定。そこから組織づくりを重ね、2022年に正式に「デザイン部門」が誕生したわけだ。
3人のマネジメント領域は次の図のようになっている。以前から自然と取り組んできた領域と、それぞれの性質に合わせてゆるやかに分担している。境界線をしっかり引くのではなくあえて曖昧にすることで、3人がバランスよく組織を運営している様が見て取れる。