Web3の説明の中で、NFTと同様に触れられることが多い「メタバース」。実は、Web3=メタバース、NFT=メタバースではありません。それでは一体メタバースとは何なのでしょうか。また、メタバースは、クリエイターにとって、どのような可能性を秘めているのでしょうか。
そもそも「メタバース」とは
機能不全に陥った近未来の米国を舞台に、オンライン上に仮想空間「メタバース」を構築した世界が描かれたSF小説『スノウ・クラッシュ』が1992年にアメリカで発売されました。それが、メタバースの原典だと言われています。
人によって定義がそれぞれではありますが、私は比較的広義にとらえていて、「現実世界のように人が自由にコミュニケーションしたり、コンテンツを楽しんだりできるインターネット上の仮想空間」と考えています。そういった意味の場合、ユーザーがインターネット上でつながりながら行うゲームであるMMO RPGも広義のメタバースと言えますし、以前話題になった仮想空間上で人々がコミュニケーションをしながら現実世界のように生活する『セカンドライフ』もわかりやすいメタバースの例と言えるかと思います。
昨今、VR技術が発展するにつれ、より多くの人々が仮想空間でコンテンツを楽しめるようになり、メタバースという言葉もより一般化してきました。
今、メタバースが注目される理由
メタバースが注目されるひとつの理由は、ここ10年でのVR技術やデバイスの発展です。たとえば昨年11月に社名をFacebookから変更したMeta社は、1兆円をメタバースに投資すると明言。2014年に買収したVRデバイス「Oculus」を中心にVR技術の進化を促し、ソーシャルVR空間「Horizon」の開発にも力をいれています。
もうひとつメタバースが注目される大きな理由として、Web3(ブロックチェーン技術を活用した分散型ウェブ・サービスの総称)との相性の良さが挙げられます。
ブロックチェーンを活用したNFTの仕組みはデジタルコンテンツの取引を容易にし、希少性や付加価値を加えることを可能にしましたが、その活用の可能性は2Dの画像ファイルのやりとりだけにとどまりません。仮想空間上にある3DコンテンツをNFT化して取引したり、デジタルコンテンツ(=NFT)を認証キーとして活用するなど、多様な用途での活用が期待されます。
具体的には、NFTはコピーが極めて難しいという特性から、イベントの入場券の機能を兼ねることができます。そのため、アーティストが特定のNFTを所有しているファンのために、メタバース上で音楽ライブを開催することなども可能です。
ブロックチェーンの仕組みを活用したコンテンツを表現する場所として、メタバースはWeb3と非常に相性が良いのです。
ここ数年のVR技術の発展にともないグラフィックの進化もめざましく、より没入感のある体験をすることができるようになっています。今後は、メタバースとブロックチェーンを組み合わせることにより経済的な仕組みが整備され、メタバース上の体験がより複雑かつ社会・経済を巻き込んだものになっていくのではないでしょうか。