デザイナーと認識が噛み合っていないかも…… HCD専門家が考える、UXが必要になった3つのワケ

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 「UXというワードをよく聞くようになったけど、実はいまいちピンときていない」。そんな方に向け、UXの“入り口”をテーマとした本連載がスタート。お伝えいただくのは、フェンリル株式会社のプロダクトオーナー兼デザイナーで、HCD-Net 人間中心設計専門家でもある末綱華英さんです。初回のテーマは、「UXがなぜ必要か」。UXについて考えていくにあたり、まずはその前提となる理由について、確認していきましょう。

本連載のお品書き

  • 第1回(今回) : UXがなぜ必要か
  • 第2回 : UXにはどんなデザインが必要か
  • 第3回 : UXデザイン、本当にその手法でいい? 手法は手法
  • 第4回:アプリ開発におけるUX 運用後の改善が大事

 「UX」という言葉を、以前から気にしている方もいれば、最近頻繁に聞くようになったな...という方もいらっしゃるかと思います。そこで、第1回目は、言葉が生まれた背景を含め、「UXがなぜ必要なのか」についてお話できればと思います。

 その前に、まずは簡単に自己紹介をさせていただきます。

 フェンリル株式会社のプロダクトオーナー兼デザイナー、末綱 華英(スエツナ ハナエ)と申します。 自社サービスでは旅プラン作成アプリ「bitter(ビター)」を、コーポレートやクライアントさまのいる案件ではデザイン業務全般に携わっています。

 前職では家電メーカーで製品やサービスのデザインに携わっており、 スマートフォンだけでなく、ほかのデバイスなどさまざまなユーザー体験について考察する機会が多かったです。

 というわけで、ここから本題に入っていきましょう。

UXがなぜ必要なのか

 1990年代、ユーザビリティ工学の分野でユーザーの主観的価値を重視する必要性から「ユーザーエクスペリエンス」という概念が用いられるようになったと言われています。「コギャル」と同世代のワードでしょうか。

 「UX」とは、ユーザー体験のこと。製品やアプリのような「モノ」ではなく、利用体験そのものを表した言葉です。

 ではなぜUXが必要になったのでしょうか?

 さまざまな要因が考えられますが、考察すると大きく3つの要因があるのではないかと思います。ひとつずつ見ていきましょう。

1.市場の変化

 以前は、機能面の向上で購入されていたものも差別化が図りにくく売ることが難しくなり、プロダクトの見た目、スペック、性能だけで選ばれる時代ではなくなりました。

 また、個人の価値も、モノ消費からコト消費へ、そしてその製品にまつわる意味やその場でなければできない体験にシフトしています。

 たとえばデジタルカメラ。いままでは100万画素から400万画素になったことが売上を伸ばす大きな要因になっていましたが、現在は2,400万画素から2,800万画素になったとしても、以前ほどのインパクトはなくなってきたように思います。

 それはなぜか。

 性能や見た目が美しいことよりも、撮影後すぐにSNSにアップしたり、面白い動画が撮影できる、みんなに見てもらえるなど、新しい撮影体験や撮影後の体験が重視されるようになってきたことが背景のひとつでしょう。

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