仕事の充実度を上げたい人へ イラストレーターとの関わりで得た、満足感のある仕事に“する”ための秘訣

仕事の充実度を上げたい人へ イラストレーターとの関わりで得た、満足感のある仕事に“する”ための秘訣
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 イラスト、デザイン、コンサルティングの3つを柱として活動するユニット「rala design」。代表兼デザイナーをつとめる青木孝親さんが、長年イラストレーターとともに二人三脚でプロダクトづくりをしていくなかで見えた、イラストとの付き合いかた、イラストの楽しさなどについてお伝えします。第3回は「満足感」がテーマです。

rala designは、デザイナーの私と同級生のイラストレーターのふたりで美大生時代に活動を始めたデザインユニットです。そのあたりのいきさつは、コラムの第1話をご覧いただけましたら幸いです。

働くことの「満足感」とは

 学生の時期を経て、多くの時間を“働く”ということに費やすようになった今、ふと「なんで働いているんだろう」「自分は働いて何がしたいんだろう」なんて漠然と考えてしまう瞬間ってあると思います。そこまで俯瞰した話でなくても、仕事で得られるものはお金以外に何があるんだろう、と思いを巡らせたことはないでしょうか。

 rala designの歩みは大学生の時からスタートし、卒業後はさらに活動に専念して、やがて法人になり……と続くのですが、当初は仕事もなく、お金もありませんでした。だから、せめて充実感だけは感じられるように意識して活動をしていました。

 当時メインの仕事となっていたのは、オリジナルのイラストを使ったセルフプロダクションの紙雑貨。商品の企画から製造、販売までのすべてを手掛けていた私たちは「この仕事には意味がある、楽しさがある、将来につながる糸口がある」と信じて(別の言いかたでは思い込もうとして)いましたし、とにかく仕事の満足感につながるものを探していました。

 まわりを見回してみれば、やりがいや使命感という言葉を思い浮かべながら仕事に邁進する人もいれば、自分にできる仕事はこれしかなかった、たまたま採用された会社の仕事がこれだった、という人も多いと思います。ほかの仕事はやりたくないものばかりだったから、という消去法的な理由の人もいるでしょう。しかし、どのような境遇にあったとしてもその仕事から満足感を得ることができたら、なんだか魅力のある仕事に思えるのではないでしょうか。

 わかりやすく魅力として表れる満足といえば、給与や報酬の大小です。満足感をはかる共通のものさしとして機能している側面がありますが、当時のrala designはお金に余裕はありませんでした。となると、お金以外はどうでしょうか。

 そこで私が着目したのが“喜び”という満足感です。どんな仕事も喜べるものにしたい。失敗だったと感じてしまう結果だとしても、その中に喜びを見出したい。活動をともにする仲間と一緒に喜びたい。そして、それらの喜びを集めていけば、次の仕事に向かっていく活力につながるのではないか――。そう考えたのです。

 読者の皆さんの働く状況は、私が頭を絞ったとしても到底想像し得る範囲のものではなく、ただ気が遠くなるばかりですが、今回は「喜ぶことによる満足感」をテーマに、さまざまな働きかたの皆さんのお役に立つことができたら幸いです。

「自分の内と外」で探るお金以外の満足

 満足感のある仕事にしようと“喜び”に注目し始めた私ですが、ともに働いているイラストレーターにとって、イラストを描く仕事の満足感がどこで生まれ、実際どのように感じているのだろう、と気になりました。ひとつの事例にすぎないことは理解していましたが、そこから共通項が見えてくるかもしれないと思い、「満足感の得られる仕事」の源流をたどるようなワクワクを感じながら、出口の見えない森をさまよってみることにしたのです。

 イラストレーターにとって、喜びの満足感はどんなところから生まれるのか。私は「自分の内と外」という二元論でイメージしてみました。

 ひとつは、自分の内側から生まれてくる喜び。それは、自己実現の欲求が満たされたときや、社会貢献による心の充足を感じたときなどが当てはまります。イラストでいえば、新しいテイストの技法を習得する、納期よりも余裕をもって仕上げるなど、自分が設定した課題を達成できたときがそうですし、公益性の高い仕事を納品したときなどは、自分が社会に貢献できたような気持ちが生まれて喜びにつながっていきます。もちろんこれ以外にも、数えきれないほどの喜びがあると想像しますが、ここでは「自己実現できたとき」と「社会貢献できたとき」という大枠のイメージに留めておきたいと思います。

 もうひとつは、自分の外側=他者からもたらされる喜びです。イラストを納品してその人から感謝の言葉をもらったとき、自分のイラストが活用されて商品が活躍しているのを目の当たりにしたとき、イラストへの評価や良いうわさを人づてに聞いたときなどがあります。これらは、自分の内なる喜びよりも刺激的で、直接的に喜びにつながります。人から評価されると嬉しい、ということなのですが、その人との距離も満足感を左右する要因です。明らかに「褒めて伸ばそう」としている上司からべた褒めされても……ねぇ。ある程度の距離があって、客観的に評価してもらえたときは真実味があって、喜びも当然高くなると思うのです。

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