まず知っておきたい“写真がもたらす効果”とは
撮影に限らず、クリエイティブ開発やコンテンツ制作をする際、もっとも基本であり大切なファーストステップとなるのが「企画」。目的やゴールをはじめにしっかりもつことが、その後の的確な撮影ディレクションにつながります。
プロジェクトで撮影する場合、写真単体で使用するよりも、コーポレートサイトやキャンペーンサイト、広報誌、InstagramといったSNSに掲載するなど、何らかのコンテンツのいち要素として使うことがほとんどだと思います。では、そもそも写真がクリエイティブにもたらす効果や役割とは何でしょうか?コンセントでは、写真の効果や役割を次のふたつだと考えています。
1.モノの魅力を伝える
「ホカホカと湯気が立つ料理や瑞々しく咲く花」。その様子を言葉だけで説明するよりも、写真で見せるほうが、料理がおいしそうなことや花の美しさなどをありのままに伝えることができます。これは製品カタログなどで発揮される写真の効果です。
2.体験と感情を伝える
たとえば、アプリケーションサービスや暮らしかたの紹介をするひとコマ。製品そのものの実態がない場合でも、写真を使えばサービスのスペックだけでなく、その便利さや体験の楽しさを伝えられます。企業ウェブサイトの事業紹介などで発揮される効果です。
写真は、文字だけの情報では伝えきれないことを伝えたり、体験や感情を想像させて見る人の心を揺さぶったりする力があります。つまり、エモーショナル(感情)に訴えることができるのが、写真の効果であり最大の長所です。
その力を生かすために「撮影する写真では何を伝えたいか?それを伝えることで、どんなことを達成したいか?」という撮影の目的とゴールを定めておくというプロセスが「企画」なのです。
ブレない企画を立てるために必要な5つのこと
たとえば皆さんは、撮影現場でこんな経験をしたことはないでしょうか?
撮影でよくあるエピソード
- 撮影カットにOKを出す基準がいまいちわからず、不安で無駄にたくさんのバリエーションの撮影をお願いしてしまった。
- 使用する画角をフォトグラファーに伝えそびれて、トリミングできないほど被写体に寄った写真になってしまった。
- 撮影現場でフォトグラファーに「構図はどうしますか?」と聞かれて答えられず、困らせてしまった。
これらは、コンセントのデザイナーやディレクターの実際のエピソードです。プロのデザイナーやディレクターであっても、ビギナー時代にはさまざまな経験をしています。
企画がしっかりしていないと、フォトグラファーに「こんなふうに撮影したい」と説明することができません。また撮影中に「なんだか違う気がする……」と判断に迷いやブレが出てしまいます。撮影はその場限りかつ、時間に制約がある中で絵づくりを完成させなければいけないプレッシャーがあります。判断の適切さやスピード感を上げるためにも、事前の企画立案はとても大切です。
では、企画を考える段階において、具体的にどんなことを検討し、何を決定しておけば良いのでしょうか。それはメディアやコンテンツの性質、プロジェクトの条件によっても変わりますが、押さえておくべき基本の項目は変わりません。その項目5つと、検討のための観点をチェックリストにまとめました。
企画に必要な5つのこと&検討のためのチェックリスト
1. 目的・趣旨
- 写真を使うメディアやコンテンツは、何のために発信するのか
- 制作にはどんな背景や理由があるのか
2. ターゲット
- どのような相手に向けて発信するのか
- その人はどんな人で、どんなニーズがあるのか
3. 伝える内容
- どんな内容が伝わればよいか
- 見た人にどんな感情を抱いてほしいか
- 撮影する写真では、どんな情報や表現を担保するのか
4. 目指すゴール
- そのコンテンツを発信することで達成したいこと、起こしたい変化は何か
5. 撮影方針(クリエイティブ方針)
- ゴール達成のために、撮影する写真はどのような表現がふさわしいのか
- そのために大切にすることや優先することは何か
これらを考えるコツは、それぞれの項目をバラバラにみるのではなく、プロジェクト状況全体を俯瞰して紐付けながら考えること。撮影はそれだけの独立したタスクではなく、プロジェクトの目標達成のために発信する、コンテンツのいち要素です。私自身も、撮影をするときはつい目の前のタスクで頭がいっぱいになりがちなのですが、コンテンツ全体のことを忘れずに、撮影の目的とゴールを論理立てて考えるよう心がけています。