組織にデザインシステムが必要な理由とは――その効果や価値を徹底解説

組織にデザインシステムが必要な理由とは――その効果や価値を徹底解説
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

 これまでさまざまな組織のデザインシステム構築や運用を支援してきたグッドパッチ。本連載ではデザインシステムにフォーカスし、その概要や歴史、導入から運用、構築にいたるまで網羅的にお届けします。第2回は「デザインシステムの意義や効果」についてです。

 こんにちは。グッドパッチのUIデザイナーの乗田です。前回の連載「良いデザインシステムとは その基本と構造をグッドパッチが解説」では、デザインシステムの構造や特徴、性質について解説しました。第2回ではデザインシステムが組織にとってなぜ必要であり、どのような効果をもたらすのかについて紹介します。

デザインシステムの必要性

 はじめに、デザインシステムが組織や組織文化、ブランドとどのように接続するのかについて解説します。

組織とユーザーの媒介としてのデザインシステム

 組織の「文化」はそのアイデンティティや価値観、ミッション、ビジョンなどの集合によって形成されています。この文化を具体的かつ外部に伝えやすい形で表したものが「ブランド」です。デザインシステムはこの「ブランド」を誰もがプロダクト全体で一貫して表現し、ユーザーに伝えるための役割を担います。

 一方デザインシステムは「プロダクト」における「ユーザー」のニーズやアクセシビリティ要件を満たす形で構築されるため、結果として組織の理念とユーザーの要求の媒介となり、両者をつなぐ役割を果たすものです。

デザインシステムが組織とユーザーの媒介として機能することを表した図。組織、カルチャー、ブランド、デザインシステム、プロダクト、ユーザーがつながっていることを表している。

 デザインシステムとプロダクトは、組織の成長や市場の変化に応じてアップデートを重ねる必要があります。それによって組織は、変化するユーザーのニーズや期待に柔軟に応えることが可能となります。

 ではなぜ、組織とユーザーの双方にとってデザインシステムが欠かせないのでしょう。その背景には、デザインシステムが両者の媒介として双方のコミュニケーションを継続的にサポートしていることが影響しています。

デザインシステムがユーザーへもたらす価値

 まず、デザインシステムの導入によってユーザーへ還元される価値について解説します。デザインシステムの恩恵を強く受けるのはデザイナーや開発者ではありますが、プロダクト開発では「ユーザーへ価値を提供すること」が不可欠です。

 デザインシステムがユーザーへもたらす価値を理解することは、デザインシステムをより効果的に構築/運用することにつながります。

一貫性のあるユーザー体験

 前回の記事では、良いデザインシステムには「Single Source of Truth」の性質が満たされていることに触れました。この性質によって、デザインシステムで取り扱うデザイン原則、色やフォント、ひいてはコンポーネントに一貫性がもたらされます。

 この性質が確保されたデザインシステムをもとに構築したソフトウェアやウェブサイトは全体でインタフェースが統一されるため、ユーザーは一貫性のある体験を享受することができます。一貫性によってユーザーは、ソフトウェアを直感的に理解したり学習したりすることが可能になります。

 統一されていないデザインはユーザー体験に悪影響を及ぼすだけでなく、ブランド自体にネガティブな印象を与える原因となったり、愛着を抱きにくくさせてしまったりします。そのため「一貫性の実現」は、組織にデザインシステムを取り入れることで生まれる効果の中でもとりわけ重要なのです。

速度と効率性の向上

 デザインシステムは、後述する「デザインと開発の効率化」ももたらします。作業工数が削減され、新機能の開発や改善スピードが向上することによって、ユーザーは新しい機能やより良い体験を素早いサイクルで受け取ることができるようになります。

※この続きは、会員の方のみお読みいただけます(登録無料)。