個人からエンタープライズ企業にまで広がったNotionの輪
――Notionに加わってからのこの3年間で、Notionに求められていることに変化はありましたか?
Rachel 変わったことと変わっていないことがあると思います。まず変わったことは、ユーザーが大幅に増え、かつ多様になった点。もともとNotionは個人のユーザーが非常に多かったのですが、徐々にベンチャー企業の利用が増えていきました。そのあとは大企業の利用が、そして最近では大手のエンタープライズ企業にまで広がってきています。使いかたもずいぶん多様になってきたため、それに比例しNotionに対する期待も大きくなってきているように感じます。その一方で変わっていないのは、Notionに対するユーザーさんの愛です。Notionというプロダクトのデザインや品質、どんなことでも叶えてしまう柔軟性が変わらず愛されています。
西 日本においては、トヨタさんや三菱重工さんなどの利用事例があります。Rachelがお話したとおり、ベンチャー企業ばかりではなく、大企業にもNotionの利用が浸透してきていますね。
――マーケティング視点で見たときに、日本市場をどのように捉えていますか?
Rachel グローバルで見た時に、Notionの強みはコミュニティにあると思っているのですが、とくに日本はそのコミュニティが強力です。さらに、日本市場ではAIなどの新しい技術の浸透がほかの市場に比べて早かった。そのため、Notionを使った新しい仕事のやりかたが進んでいる場所だと感じています。
西 また、日本のユーザーさんは日本語化に望む基準が高かったため、私たちもかなり力を入れました。そのおかげでNotionの日本語版は、最初から日本人が作ったかのような自然な表現になっているはずです。
「プロダクトが持つ力」と「コミュニティ」の結びつき
――Notionで注力しているマーケティング領域はありますか?またそのなかでクリエイティブはどのような役割を果たすと考えていますか?
Rachel コミュニティおよびクリエイターへのコミットが非常に重要だと思っています。クリエイターの皆さんがNotionを愛してくださり、Notionの中でユニークなことをやりたいと考えている。さらに、「自分の作ったものをほかの人と共有したい」「自分が覚えた使いかたをほかの人にも教えたい」といった気持ちが強いんですね。そしてそういった方々のおかげでNotionの認知が高まっていく。これは、Notionのユニークなポイントではないでしょうか。
クリエイティブは、Notionが特別で記憶に残る製品であるために、非常に大切です。またブランドを形成するうえでも重要な役割を果たしていますね。そもそも創業者のひとりがデザイン中心の思想を持っていることもあり、Notionという会社自体もデザイン中心であると言えます。
そのためマーケティングにもその思想が表れているでしょう。たとえば多様なテンプレートがあり、ユーザーが思うように組み合わせることができる点もクリエイティブだと思います。コミュニティの中の何百万人というユーザーたちが、私たちが思いもつかなかったようなクリエイティブなNotionの使いかたを編み出し、それを発信して共有しています。そのことからも、Notionという製品およびコミュニティの中にクリエイティブがしっかり根付いていることを感じています。
――コミュニティと一緒にプロダクトを成長させるためには何が重要なのでしょうか。
Rachel Notionに大きなコミュニティが存在するのは、プロダクトが持つ力ゆえだと思います。Notionを使うことによってユーザーは自分だけのプロダクトを作れてしまうこと。自分で設計したものであれば愛着も湧くため、この点が非常に重要です。そのため「ユーザーが自分で制作できるプロダクトになっていること」が、大切な要素のひとつです。
そして、私たちもそんなコミュニティを後押しするためにさまざまなコンテンツを発信しています。プロダクトに関する情報へのアクセスを担保することはもちろん、コミュニティイベント「Notion Creators Fes」では創業者2名が来日します。当社のエグゼクティブにも直接コンタクトできる場所を設け、ユーザーとNotionの間に直接的な関係を築くことができるようにします。ただし、コミュニティの行動を、私たちがコントロールしようとは思いません。コミュニティの皆さんが自発的に集まって実施する行動を止めることはせず、「コミュニティが作ったものはコミュニティのもの」という意識をユーザーさんにも持っていただきたいですね。
そうすると、コミュニティのメンバーがほかのユーザーに使いかたを教えたり、Notionの認知を広げてくれたりします。そういう意味でコミュニティと会社との間の相互補完的な関係も、コミュニティとプロダクトを成長させる重要な要素のひとつだと思っています。