NECのCDO勝沼さんの取り組みから、「デザインに投資してほしい」と考える人がとるべき行動が見えてきた

NECのCDO勝沼さんの取り組みから、「デザインに投資してほしい」と考える人がとるべき行動が見えてきた
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2024/01/09 08:00

 CDOやCXOとして活躍するクリエイターに日々の取り組みなどについて取材をする本コーナー。今回登場するのは、NECでCDO(チーフデザインオフィサー)をつとめる勝沼潤さんだ。従業員12万人を抱える同社では、2023年4月に初となるCDOを設置。経営の一翼を担う役割を、デザイナーに任せるという決断をしたのには、どのような背景があったのだろう。その裏側には、デザインの力でNECブランドを輝かせるために行った、勝沼さんのさまざまなアクションがあった。

CDOの役割は「デザインの力を使ってNECという企業の価値を上げること」

――まずはご経歴から教えてください。

多摩美術大学卒業後、当時別会社であった「NECデザイン」に就職し、携帯電話のNシリーズなどに携わりました。そのあと転職したSONYのクリエイティブセンターでは、ホームプロダクツやXperiaのデザインに関わったり、6年ほど海外赴任を経験したりしたのち、2018年に自身のクリエイティブスタジオを立ち上げ。プロダクトだけではなくコミュニケーションやブランディングなども行い、国内外問わずさまざまなクライアントさんとお仕事をさせてもらいました。2020年に再入社のような形でNECにジョイン。2023年からは全社のブランディングとデザインを統括する立場として、CDOに就任しました。

――なぜNECでは「デザイン部門のトップ」ではなく、経営層として「CDO」を設置することになったのでしょうか。

CDOという名称が加わったのは今年度ですが、2020年にデザインを部門として設置することになりました。そのトップとして白羽の矢が立ち、デザイン本部長として2020年にNECに加わりました。2022年に役員になったときはCDOではなく、「コーポレートエグゼクティブ」という名前でしたが、その役割はデザインとブランディングとコミュニケーションの3つのコーポレート機能を統括することでした。

当時、世の中の潮流としても「デザイン」が指すことの範囲がとても広がってきていました。そんななか、多くのBtoBビジネスも展開しているNECのような企業におけるデザインの提供価値を最大化するための体制を提案。その結果、デザイン部門、ブランディング部門、コミュニケーション部門をNECのブランディング&メッセージング機能であるととくくり、それを統括する立場としてCDOが必要だとの結論に至りました。デザイン部門のトップは別にいるのですが、私は「デザイン」を使って、これら3つを統括することで、NECのブランディングとメッセージングをまとめあげていく役割を担っています。

CDOである現在とコーポレートエグゼクティブであった2022年と、役割や体制に大きな変更はありませんが、「CDO」になったことで、デザインの力を使ってNECという企業の価値をあげていくことを改めて社内外に示しやすくなりました。

日本電気株式会社 コーポレートエグゼクティブ チーフデザインオフィサー 勝沼 潤さん
日本電気株式会社 コーポレートエグゼクティブ チーフデザインオフィサー 勝沼 潤さん

コーポレート・エグゼグティブになる前にまず私は、「デザインの力を使い、NECというブランドを輝かせるためにはどうしたらいいか」を考えました。そこで思い至ったのは、IRの発信、製品やサービスのデザイン、文化づくりまでふくめて企業全体をブランディングしていく必要があり、それが企業のトップが考える経営戦略と密につながっていなければならないということ。そこで、「経営戦略とブランド戦略がコアにあり、それを軸にトップのメッセージやIRの発信、ウェブマーケティング、事業、人事、文化づくりがある。この考えかたがNECには必要だ」と提案をしました。

それを受け入れてもらった結果が、今につながる組織体制です。大きな特徴は、コーポレートデザイン、コーポレートコミュニケーション、コーポレートブランディングの3つの部門が独立しているのではなく、大きくくくると経営企画部門のなかにある点。デザイン部門が経営企画に内包されている形は、なかなかないのではないでしょうか。しかしこの立てつけでこそ、企業のあらゆるタッチポイントをしっかりデザインすることができますし、それによってNECのブランドが形づくられ、企業価値向上の流れを生むことができる。そう考えました。

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