普及に課題はあるもののクリエイターにとって魅力的な「AR」と「MR」 象徴的な事例や今後の可能性を考察

普及に課題はあるもののクリエイターにとって魅力的な「AR」と「MR」 象徴的な事例や今後の可能性を考察
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 XRやメタバースといったキーワードは依然として未来を感じさせる魅力的な響きを含む一方、一過性のブームが去ったように捉えられる風潮もあります。こうしたなか、デザイナーやクリエイターとしてバーチャル文化とどのように向き合うべきなのか、疑問に思う人も多いかもしれません。この連載では、デザイナーやクリエイターの観点を主軸に、Oculus Rift DK1時代からXRに取り組み作品制作や企業のXR導入支援を行ってきたCHAOSRU代表の内藤薫さんが、その全体像を俯瞰した考察をまとめていきます。第2回は「AR・MR」についてです。

AR/MRの現在地とは

 現実世界とバーチャルを融合させるAR/MRは、未来ある夢の技術として何年も前から実験が行われ、デバイスの進化やスマホの登場によってさまざまな文脈で進化してきました。直近ではAppleがVision Proを発表したり、Metaが発売するMeta Quest3もMR寄りの設計が売りとなっていたりと、新たな技術革新が世間に話題を提供しています。

ヘッドセット、ARグラス

 私は大学時代からMRデバイスを使った制作に携わったことがあり、世間の話題が上がるたびにデバイスの進化をウォッチしてきました。AR・MRデバイスがスマホに代わるほどのインパクトをもって普及すれば、インターフェイスやデザインの文法も大きく変わることが想像できます。

 しかし、一般の人が期待するスペックに到達するには、まだまだデバイス側の改良に時間がかかるでしょう。夢の技術として進化を追う日々はもう長らく続き、ARのメインの土俵は、当面スマホが中心となると思われます。

 このように、やはり普及には課題があるARですが、表現としてのおもしろさはクリエイターにとって魅力でしょう。いくつかの切り口で、コンテンツの事例を見ていきたいと思います。

ARコンテンツとクリエイティブな表現

ARフィルター

 おそらくもっとも多くの人が触れたことのあるARの例は、アプリやSNSに組み込まれたエフェクトフィルターではないでしょうか。顔を認識していろいろなファッションを楽しんだりキャラクターになれたりと、InstagramやSnapchatなどさまざまな場で目にすることがあると思います。

 表現の幅は非常に広く、顔や手などを認識して表情の変化に合わせたアニメーションを入れたり、簡単なゲームを作ることもできたりと、想像力を刺激するフィルターを世界中のクリエイターが公開しています。必ず3Dを使わずとも作ることができるため、比較的グラフィックデザイナーにも優しい設計かもしれません。

 専用のアプリをダウンロードしたり特別な場にアクセスすることなく、日常的に使うSNSに埋め込まれた体験のため、現時点でいちばん活用されるARとして有力なジャンルがエフェクトフィルターだと感じています。MetaはAR広告を強化していく方向を打ち出しているともされており(参考記事)、ファッションブランドなどがさらに積極的に広告を作っていく可能性もあるでしょう。こうした比較的近い未来に向け、魅力的なフィルターを制作できるクリエイターは重宝されるかもしれません。

ARゲーム

 好奇心旺盛で遊びが好きな子どもとARゲームは親和性が高いかもしれません。大ブームとなったポケモンGOから始まり、2020年には任天堂もリアルとバーチャルを融合させたARゲームを発売しました。

マリオカート ライブホームサーキット

Web ARの代表的なプラットフォーム「8th wall」で作られたARゲームの事例

個人のエンジニアによるARゲームの作例

アイディア次第で、非常に夢のふくらむ表現のコンテンツが生まれる予感がします。

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