ユーザーテストにおける生成AIツールの活用について検証してみた

ユーザーテストにおける生成AIツールの活用について検証してみた
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 本連載のテーマは、ビジネスシーンに大きなインパクトを与えているAIとデザイナーのコラボレーション。デザイナーとして活躍する小木曽槙一さんが、AIとデザインの可能性を探るべく、実務に活かすことができる技術やツールを選定し、それらを検証していきます。今回は「AIを活用したユーザーテストとフィードバックの可能性」がテーマです。

 今回は、ユーザーテストやフィードバックの収集を行う際に、AIを駆使して改善できるのかを探っていきつつ、生成AIを活用したツールについて比較・解説していきたいと思います。

ユーザーテストとフィードバックの重要性

 プロダクトがユーザーのニーズや期待にどれだけ応えているかを評価するうえで、プロダクトデザインにおけるユーザーテストとフィードバックは不可欠な要素です。

 ユーザーテストは、ユーザーの行動・反応の観察によって製品の使いやすさや魅力を評価したり、デザインの仮説検証などに必要なステップである一方、ユーザーから直接得られる貴重な意見・感想であり、製品の改善点を明らかにするのに役立つのがフィードバックです。これらのプロセスは、製品の成功に直接影響を与えます。

 ユーザーテストやフィードバックを通じて得られたインサイトは、プロダクトの方向性を決定し、ユーザーの使いやすさを最適化するための重要な羅針盤となります。

 もちろん、ユーザーテストといってもさまざまなやりかたがありますが、今回はプロダクトデザインに関連した「ユーザビリティテスト」や「スプリントレビュー」など、直接ユーザーからフィードバックを得ることを前提としたテストを指すこととします。

 これらのテストはプロダクトが実際に市場へリリースする前、あるいはリリースされたあとに、ユーザー体験や機能性を評価し、必要に応じて改善するために欠かせないものです。

AI単体でユーザーテストは可能なのか

 この問いに対して私は、「現段階ではAIにのみ頼るユーザーテストは不可能」と結論づけました。ただそれは、AIがユーザーテストにおいて重要な役割を果たせないとの意ではありません。AIはユーザーテストのプロセスを「補完・補助」する方法を提供していると考えています。

AIの限界

AIは人間の感情や微妙なニュアンス、背景にあるコンテキストの理解など、複雑な人間の行動を完全に理解することはまだできません。ユーザーテストでは、これらの要素がプロダクトの受容性やユーザー体験の質を大きく左右するため、AIだけに頼ることはリスクがともないます。また、大量のデータをもとにした調査分析なども、特定のデータやアルゴリズムにもとづいて動作している以上、その分析はときに偏りが生じる可能性があります。

AIの役割

一方、AIはユーザーテストの効率性と精度を高めるため場面では非常に有用です。たとえば、AIは大量のユーザーデータを迅速に処理し、パターンや傾向を特定することができます。これにより、デザイナーや研究者はより迅速に洞察を得たり、そのうえで意思決定を行ったりすることが可能になります。また、AIを利用することで、ユーザーテストの一部のプロセスを自動化し、人的リソースの負担を軽減することもできるでしょう。

「副操縦士」としてのアプローチ

現時点でプロダクトのユーザーテストで効果的にAIを使う場合には、すでにGitHubがGitHub Copilotで実現している「副操縦士」のような役割、つまりAIと人間が協力するハイブリッドモデルであることが多いはずです。AIはデータの収集や分析、情報の要約、サジェストを行うのみにとどめ、結論や最終結果を委ねる場面では使用しないようにします。使い手側(この場合はデザイナー)はその洞察を解釈し、より深い理解を得るための質的分析と最終的な判断を行います。

 このように、AIの能力と人間の洞察力を組み合わせることで、より効率的かつバランスの取れたユーザーテストが可能になるのです。

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