ゴールへ近づくスピードを圧倒的に上げるために UIUX Labが目指すこと
――まずは、鷲山さんのご経歴から教えていただけますか?
最初は雑誌やポスターのデザインなど、紙媒体のデザイン制作をする会社に入社して、そこから靴屋に転職しました。死ぬほど靴が好きなんですよね。マックス時には1,000足くらい持っていて、スニーカーの重みで部屋がへこんだこともあります(笑)。ですがふと考えた時に、デザインがやっぱり得意だなと思ったんです。仕事としてはやったことがありませんでしたが、ウェブのデザイン会社に入りました。
その少しあとくらいに、iPhoneが日本で発売されました。「これからはスマホの時代がくる」と思ったのでアプリを作りたかったのですが、その会社ではできなくて。それで転職先を探していたら、サイバーエージェントグループにたどり着きました。2011年ごろだったと思います。
当時コミュニケーションアプリなどを作っていた「グレンジ」というサイバーエージェントの子会社に入社しました。ですが、現在のゲーム管轄になる前身の組織が、「ゲームで勝負しよう」という方針になり、少しずつゲームも作るようになっていきました。そもそも私の根幹にあったのは、人と人の間でコミュニケーションを発生させる何かを作りたいということ。それがゲームでもできると思い、今に至るまでずっとゲームを作っています。今もバリバリ最前線で手を動かしていますよ。
――「UIUX Lab」を立ち上げた経緯やその概要について教えてください。
UXって、デザイナーだけではなく、企画やエンジニアリングに接する部分も多いですよね。ですから、社内的にUXはとても重要であるという文化を加速させたいと思ったのが立ち上げた理由のひとつです。それによって、UI/UX領域の品質やサービスのクオリティを上げていきたいという意図もあります。Labのメンバーは、現在6人ほど。色々な子会社から、スキル面とマインドの部分を含めてアサインしました。
サイバーエージェントのゲーム事業の組織体系も少し特殊で、ゲームは、すべてサイバーエージェントの子会社で開発しています。サムザップ、ジークレストなど現在10社以上の子会社が所属していますが、それぞれ勝負している領域や強み、作りたいものは異なります。基本的に好きなものを作るというスタンスではありますが、各社が持っているノウハウの横展開があまりなかったり、属人化していることが多かったり。知見がそれぞれの会社にしかたまらないのは、サイバーエージェント全体として非常にもったいない。それを解消することも、UIUX Labの目的でした。
たとえば「2Dしかやっていなかったけど3Dもやりたい」とある子会社が考えたときに、『オルタナティブガールズ2』というタイトルで早くから3DにチャレンジしていたQualiArts(クオリアーツ)のノウハウを活かすことができれば、自分たちでイチから3Dなりの表現を模索するよりも、ゴールへ近づくスピードを圧倒的に上げることができる。UIUX Labも、UI/UXの知見をためることで、「好きなことはするんだけど、成長角度や成功確度は組織全体として上げていこう」という思いでやっています。
また、「今こういうものを作っていて、こんな課題があるんだけどなにかいい案ないですか?」といった依頼がLabにくると、各社のプロジェクトとは別に、Labのメンバーがその仕様からすべてを把握。ときには動くモックを作ったりしながら、その課題の解決策をLabが提案型でプレゼンしたりもしています。
ゲーム事業部では、「各社力・全社力」という言いかたをよくします。各社の強みはより強みとなるように、弱みとなる部分については致命傷にならないように。子会社制をとってはいるのですが、組織全体を横軸でつないで高めあっていきましょうという考えが根幹にあります。その軸があったから、横軸で課題解決やノウハウを共有するというUIUX Labのコンセプトややりかたなどが、メンバーにもスムーズに浸透したのだと思います。