現代の再登場事例:SNSで火がついたマスコットたち
アメリカ発アパレルブランド「Fruit of the Loom」の「Fruit Guys」
長らくテレビCMで親しまれてきたフルーツの着ぐるみキャラクター「Fruit Guys」は、デジタル時代に合わせて戦略をシフトした。テレビからSNSへと主軸を移し、動画やミームを通じて若い層にも浸透している。

McDonald'sのGrimace
マクドナルドの紫色の不思議なキャラクター「Grimace」は、TikTokで突如バズを巻き起こした。「#GrimaceShakeチャレンジ」が拡散し、結果としてマクドナルドの売上は10.3%アップ。数十年眠っていたマスコットが、SNSによって新たな文化現象へと変貌した好例だ。
@mcdonalds gotta look good for my bday #grimacesbirthday #grimaceshake #mcdonalds ♬ original sound - McDonald’s
DuolingoのDuo
語学学習アプリ「Duolingo」のマスコット「Duo」は、SNSマーケティングの成功者として知られている。ユーザーに「学習しないと襲いかかる」かのようなコミカルで衝撃的な演出を展開し、ユーモアを武器にブランド認知を拡大した。DuoはTikTokやXで「恐怖と笑い」を両立させる存在として、多くのファンを獲得している。
日本のクリエイターやデザイナーへのヒント
海外事例だけでなく、日本のブランドやクリエイターにとってもマスコット活用のヒントは多い。重要なのは「過去のキャラをそのまま復活させるのではなく、現代に合わせて再創造すること」だ。
「ネオ・ノスタルジー」という概念は、懐かしさと新鮮さのバランスで成り立つ。動きやムードをSNS向けに最適化し、ユーザーとの双方向的な関係を設計する必要がある。GIFやショート動画、インタラクティブコンテンツなど、軽やかに拡散するフォーマットとの相性を意識すべきだろう。
たとえば日本でも、ソフトバンクの「お父さん犬」はユーモアと親近感で長期的に愛されているし、ドコモの「ドコモダケ」は柔軟なデザインで多様な展開を可能にした。さらに熊本県の「くまモン」はご当地キャラを超え、全国・海外に広がる経済効果を生み出し、マスコットが強力なブランド資産となり得ることを示した。

これらの事例が示すのは、マスコットが「遊び心」と「戦略性」を兼ね備えることで、時代を超えて人々の心に残り続けるという点だ。とくにSNS時代では、親しみやすさやユーモアに加え、ユーザー参加型の仕掛けが成功のカギを握る。
そこで重要なのは、マスコットを単なる「広告の小道具」としてではなく、「長期的に育てるブランド資産」として考えること。企業ロゴやスローガンと同じように、マスコットがブランドの人格を担い、継続的な価値を提供する存在になり得るのだ。
マスコットは“文化的磁力を持つ資産”へ
ブランドマスコットは、もはや過去の遺物ではない。「ネオ懐かしさ」という感情的武器を携え、柔軟に変化できる強みを持ち、さらに数値的に裏付けられた効果を示す存在である。
デジタル時代の断片的な情報環境において、マスコットは「文化的磁力を持つ資産」として再評価されている。個性とユーモアを通じて人々を惹きつけ、ブランドとの持続的な関係を築くためのカギとなるだろう。
今こそ、クリエイターやブランド担当者は自らの活動にマスコットをどう活かすかを考えるときだ。ノスタルジーを再解釈し、現代の文化に響く形へと再生させることで、新たな可能性が拓かれるだろう。