近年の心理学研究により、人は運動トレーニングを行った際に他人から褒められると、運動技能を効率的に習得できることが明らかにされている。筑波大学、国際電気通信基礎技術研究所(ATR)、JST 戦略的創造研究推進事業による研究チームは、人ではなく、人工的な存在であるエージェント(ロボットやCGキャラクターなど)から褒められても、人は上手に運動技能を習得できることを科学的に証明した。
同研究では、さらにエージェントの数とその身体性の影響について検証を進めた。まず、褒める回数は同じままで、エージェントの数を増やし、複数のエージェントから褒められる状況で運動技能の変化を調べたところ、エージェントが1体より2体の場合に、運動技能の習得がより促進されることが判明。また、エージェントの種類について、物理的な身体を持つロボットとディスプレイ上に仮想的な身体を持つCGキャラクターの間で褒め効果の違いを調べたところ、どちらでも人の運動技能の習得は促進され、その効果に違いは認められなかった。
以上により、物理的な身体を持つロボットでも仮想的な身体を持つCGキャラクターでも、人はエージェントから褒められると、運動技能の習得がより効率的に促されること、さらには、複数のエージェントからの褒めがその効果をより高める可能性があることが示唆されたという。
同研究チームは、エージェントからの褒め以外にも、人の行動変容を促すために重要な要素は何かを明らかにすべく、さらに研究を進めている。今後は、エージェントの身体性や社会性が人の行動変容に与える影響に着目し、その原理を明らかにしていく考え。同研究を通して、将来的に教育分野における学習支援エージェントや、医療分野におけるリハビリ支援エージェント、福祉分野における介護・療育支援エージェントなど、人と長期にわたって関わりながら人のポジティブな行動変容を促すエージェントシステムの開発に貢献することが期待されるとのこと。