CA、著名人の「分身」となるデジタルツインをキャスティングするサービスを芸能事務所や著名人向けに開始

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2021/08/03 05:30

 サイバーエージェントは、タレントやアーティストなど著名人の公式3DCGモデルを制作し、著名人の「分身」となるデジタルツインをキャスティングするサービス「デジタルツインレーベル」を、芸能事務所および著名人向けに開始した。2023年までに著名人500人のデジタルツインの制作およびキャスティングを目指し、デジタル空間におけるさまざまな活動を促進していく。

背景

 コロナ禍の影響によりフィジカルな空間では時間や場所など物理的な制約が現在も続いている。しかしアーティストのクリエイティブ表現においては、没入感とインタラクティブ性の高いデジタル体験ができるメタヴァース(※)もサードプレイスとして認知され始めており、さらに現在はアートの世界を中心にNFT(Non-fungible token/非代替性トークン)と呼ばれる技術を使ったデジタルアートが注目を集めるなど、デジタル空間がアーティストの新しい活動の場として市場拡大している。

 また、近年はリアルな音声付き動画をAIで制作する「シンセティック・メディア」が注目されAI技術の研究が進むなど、広告やエンタメ、接客などさまざまな分野でデジタルヒューマンの活用が期待されている。XR技術を用いた映像表現、バーチャル空間でのライブ開催はすでに増加しており、開発がさらに加速化しているARグラスなどのウェアラブル端末やVRデバイスが広く一般化していくことで、XR技術を活用したデジタル空間のみで完結するコンテンツが今後より一層多く生まれてくることが想定されている。

※メタヴァース:インターネット上の仮想空間。利用者はアバターとして仮想空間に入り、他者とコミュニケーションをしたり、その中で経済活動が行ったりすることが可能な場所。

概要

 このような背景のもと、タレントやアーティストなど著名人の公式3DCGモデルを制作し、著名人の「分身」となるデジタルツインをキャスティングするサービス「デジタルツインレーベル」を、芸能事務所および著名人向けに開始した。2023年までに著名人500人のデジタルツインの制作およびキャスティングを目指し、デジタル空間におけるさまざまな活動を促進していく。

 「デジタルツインレーベル」では、事前に著名人の全身の3DCGデータ・身体的特徴を捉えるモーションデータ・音声データなどを取得し、本人の「分身」となる高精細なデジタルツインを制作。そして、広告プロモーションなどへのCGキャスティングや、デジタルツインを起用した企画立案などを実施。フィジカル空間での本人の活躍に加え、デジタル空間でのデジタルツインによる活躍の場を拡大するとともに、新しい価値づくりに取り組んでいく。

デジタルツインレーベル
デジタルツインレーベル

 著名人はデジタルツインを制作することで、本人同士の対談やドラマやCMなどにおいて未来と現在の姿での映像共演ができるようになるほか、アスリートは世界中を巡り試合を行っているオンシーズンでもCM撮影ができるなど、物理的な制限から解放されたタレント活動が可能になる。また、ダンスや音楽の演奏など本人のスキルを拡張した表現などもCG技術で実現が可能。

 また、同社では健全なマーケットづくりを目的に、ディープフェイクの悪用を検知する研究にも積極的に取り組んでいる。公式3DCGモデルはガイドラインに則って制作・管理を実施、著名人の偽物を発見する技術に投資しフェイクデータの検知・摘発を行うことで、著名人の著作権や肖像権の保護、各メディアの信頼性の確保、技術の正しい社会実装および発展に努めていく。

公式3DCGモデル デジタルツイン1人目:世界的トップモデル 冨永愛さん

 1人目のデジタルツインとして、世界で活躍するトップモデルの冨永愛さんが参加。冨永愛さんは世界的トップモデルとしてのみならず、女優、執筆、テレビ、ラジオ、イベントでのパーソナリティーなど幅広く活躍している。

 冨永さんの分身となるデジタルツインは、顔のみならず冨永さんの全身を3DCGスキャンしている。表情豊かな静止画だけでなく、バーチャルファッションショーでウォーキングをしたり、本人の音声を合成したりするなど、動きのある映像出演も可能。メタヴァース空間での新たなブランディング構築に挑戦していく。

デジタルツインモデル1人目は、世界的トップモデルの冨永愛さん
デジタルツインモデル1人目は、世界的トップモデルの冨永愛さん

技術について

 これらを高クオリティで実現するには、顔や体を高精細に表現するコンピュータグラフィックス技術、コンピュータビジョンによる高品質な人物キャプチャ技術、本人らしい声を自在に再現する音声信号処理技術、映像と音声を一致させて動作を表現するリップシンク技術など、最先端の機械学習手法を取り入れた高度なAI映像表現の技術が重要である。

 「デジタルツインレーベル」の公式3DCGモデルは、同社のAI技術研究組織「AI Lab」と、子会社でフォトグラメトリー技術やデジタルヒューマンなどCG制作を強みとする株式会社CyberHuman Productionsとともに制作している。

 AI技術の研究開発に加え、業界トップクラスの機材を搭載した高精細な3Dフェイシャルスキャン撮影が可能な出張型3DCGスキャンカー「THE AVATAR TRUCK」や、「全身3Dスキャンシステム」、カメラやセンサーによって顔や身体の動きの特徴をとらえる「モーションキャプチャシステム」と、それらで取得した大量の人物データと技術を組み合わせることがカギとなる。同社がもつ技術資産を活かし、さらなる高クオリティな表現を目指していく。

今後

 AI・CG技術の進化によりデジタル空間における活動の幅が今後さらにひろがると考えられる中、新しい価値を生み出す「人のデジタルツイン」の可能性を追求し、デジタル空間だからこそ作ることができる表現に挑戦するとともに、企業のマーケティング活動の拡大に貢献していく。