博報堂、五感の相互作用を企業のブランド体験開発に活用する実験 第1弾はビールのおいしさを増幅する音楽

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2022/05/30 20:00

 博報堂のプロジェクトチーム「Human X(ヒューマンクロス)」は、東京大学大学院情報理工学系研究科の鳴海拓志准教授と共同で、クロスモーダル知覚(五感の相互作用)を企業のブランド体験開発に活用する実験活動「Human X Experiment(ヒューマンクロス エクスペリメント)」を開始した。生活者インターフェース(企業・ブランドと生活者の接点)を、人間の身体や感覚の観点から感性的・科学的にデザインする取り組みだという。

 博報堂は、ブランドを起点とした生活者発想による事業成長・事業変革を「ブランド・トランスフォーメーション(BX)」として提唱し、その実現に向けた企業支援やソリューション開発を行っている。すべてがデジタルで接続する時代に、ブランドが生活者から選ばれ、生活者と長くつながり続けるためには、テクノロジーやデータの活用だけでなく、“生活者の感覚や感情にはたらきかける豊かな体験”の提供が求められていくと考えられる。

 「Human X」は、そうした新しいブランド体験の開発を行う。同組織は専門組織「博報堂ブランド・イノベーションデザイン」内のチームで、2018 年に発足して以来、クロスモーダル知覚を活用した独自のプロダクトやサービス開発に取り組んできた。『書くを楽しむボード Write More(ライトモア)』や、『食育フォーク pacoo(パクー)』など、異なる感覚を組み合わせて生活者の課題を解決するプロダクトを開発している。

 今回、同組織の新たな試みとして、クロスモーダルインタフェース研究を行う東京大学の鳴海拓志准教授との協働体制を構築し、クロスモーダル知覚がブランド体験やブランド・トランスフォーメーションにどのように活用できるかを実証研究する活動「Human X Experiment」をスタートした。

 具体的な活動として、生活者の日常に関連が深いテーマを起点とした『〇〇×五感体験デザイン』の実験シリーズに取り組むとのこと。鳴海准教授の監修のもと、異なる感覚の組み合わせで、生活をより豊かにする仕組みを感性的・科学的に開発していく。実験の成果は随時公開していく予定だという。

 また同時に、企業のブランド変革支援として、活動から得られたクロスモーダルナレッジを企業が持つブランドの“らしさ”と掛け合わせることで、生活者の身体性や感情に着目したブランド開発や世界観構築、新たな体験創出、研究開発、新事業開発にも取り組んでいく。

第1弾実証実験「おいしさ×聴覚」のプロトタイプ公開 「ビールのおいしさを増幅させる音の可能性」

 実証実験の第1弾として、「おいしさ×聴覚」研究のプロトタイプを公開。既往の学術研究を活用し、効果検証された科学的根拠に基づき、科学的かつ感性的なアプローチで「ビールのおいしさを増幅させる音楽」を開発した。

 ビールを飲みながら聞くと、ビールのさまざまな食感が際立ち、新たな美味しさ体験を創出する音楽となっている。注意制御がもたらす感覚増幅に着目し、リアルな音の誇張表現により高い臨場感を生んだり、別の効果音の組み合わせで食感を連想させたりすることで、美味しさを増幅させる。

 飲む前に聞いて期待感を高めるイントロから、「クリーミー感を増幅する音楽」「炭酸感を強める音楽」「のどごし感を増幅する音楽」と、一連の楽曲を聞きながらビールを味わうことで、時間の経過も含めた新たなおいしさを体験することができる。