「まずは足を踏み入れるべき」と感じたショートドラマ市場
――今回のプロジェクトの背景からお聞かせください。
古波蔵(KDDI) プロジェクトのきっかけは大きくふたつあります。ひとつめは、ユーザーがエンタメコンテンツを視聴する機会としてのスマートフォン利用が増えていること。もうひとつは、KDDIとしてユーザーさんに、より多様なエンタメコンテンツをスマートフォン上で楽しんでもらうための方法を模索していたことが背景にあります。こうしたなかで、昨今トレンドになっている縦型ショートドラマに注目し、その制作に携わっていきたいと考えていました。
KDDIでは、オープンイノベーションファンドや事業共創プラットフォーム「KDDI ∞ Labo(ムゲンラボ)」といったスタートアップ関連の事業も手がけているため、スタートアップに理解のある会社と一緒に取り組みができればと考えていました。そうしてご相談したのが、松竹ベンチャーズさんです。
森川(松竹) お話を伺ったときは、率直に嬉しかったですね。コンテンツが多様化している中で、スマートフォンで見られるようなコンテンツにどう関わっていくかを、私たちとしてもちょうど考えているタイミングでした。
小林(松竹) お話をいただいたのが、たしか2023年の年末ごろだったでしょうか。私自身もショートドラマ市場が気になり始めたタイミングで、IPを扱う人たちも力を入れ始めていることを感じていたため、我々としてはまず一度足を踏み入れてみなければならないと考えていました。打席に立って、失敗も繰り返し経験することで、成功するチャンスを得られるだろうと。
古波蔵(KDDI) 今回のプロジェクト「AS CREATION PROJECT(アスクリエイションプロジェクト)」は、新しい映像作品を作っていく若手の支援が目的。その具体的な座組みについては、ある程度私たちで構想を固めてから松竹さんにお話しました。
森川(松竹) KDDIさんから伺った内容で、すぐにプロジェクトの輪郭をイメージできました。もちろん、実際にスタートアップ企業が制作するコンテンツの内容など不確定な要素もありましたが、私たちとしてはキャスティングや映画館などのインフラを活用するといった部分で、何を明確に支援すべきかを想像できた点もありがたかったですね。
――今回のプロジェクトにおけるKDDIと松竹ベンチャーズの役割分担を教えてください
古波蔵(KDDI) KDDIとしては、ドラマ制作における資金面やプロモーション活動におけるサポートを行っています。第1弾のごっこ倶楽部さんとの制作を進めていく際は、その制作費をKDDIが支援しながら、auの公式SNSからコンテンツを紹介するなど、我々のアセットを活かしたプロモーションを実施しました。
森川(松竹) 弊社では、具体的なスタートアップ企業の支援を行っていきます。たとえばキャスティングのネットワークがないのであれば芸能プロダクションさまを紹介したり、上映会をするのであれば映画館の手配をサポートしたりといった具合です。また無理に介入するのはかえって支障がでるケースもあると思うのですが、スタートアップ企業からの要望があれば、制作そのものの支援や、それに付随するネットワークの紹介も可能です。
小林(松竹) また制作したショートドラマが大ヒットした場合に、舞台化やアニメ化などの展開を考えたり、反対に当社の過去作の映画やアニメを切り出し、縦型ショートドラマに持ち込むことができないかといった可能性を模索したりすることも、我々の役割のひとつです。