SerifはAffinityクリエイティブスイートのバージョン2(以下、Affinity V2)を発表した。Affinityは、イギリス発祥の低価格で買い切りタイプのクリエイティブソフトウエアで、写真編集、イラストレーション、ページレイアウト加工の3つの製品を販売している。Affinity V2は、これら3製品の再考バージョンで構成されており、新機能と新しい見た目を備えている。
Serifは、グラフィックデザインソフトウェアを開発・提供する会社として1987年に設立。初期には趣味で利用している人を対象に開発を行いビジネス的な成功もおさめたものの、2009年に新しいアイディアをもち、プロフェッショナル向けのアプリケーション開発をスタート。開発期間5年を経て、2014年にAffinity Designerをリリースした。その後、Affinityクリエイティブスイートとして、ラスターベースの写真エディタ「Affinity Photo」、ページレイアウト用ソフト「Affinity Publisher」などのクリエイティブアプリケーションをそろえた。
世界中で400万人以上のユーザーをもつAffinityだが、日本は5番めに大きな市場となっている。そんな日本の状況について、記者発表会に登場したSerif CEOのAshley Hewson(アシュリー・ヒューソン)氏は、次のようにコメントした。
「正直なところ、日本でのマーケティングに非常に力を入れてきたわけではありません。しかし、我々のアプリケーションが、信じられないほどのスピードで多くの人に使われるようになってきています。これはクチコミの影響が大きいです。アプリケーションの売上は年々日本でも増えていますが、今年もさらに40%の成長を見込んでいます」
ブランドアウェアネス認知度でも「非常に大きく成長してきた」と同氏。「最初のころ日本のユーザーは我々のことをApp Storeで知り、見つけていたのが実情ですが、近年は大多数の方が我々のウェブサイトから購入しています」とアピール。ユーザーの約半分がiPadでAffinityを利用していることも、日本市場の特徴だと続けた。
また、新しいバージョンとあわせて「Affinity V2ユニバーサルライセンス」も発表。Mac、PC、iPadで使用できるAffinity Photo 2、Affinity Designer 2、Affinity Publisher 2を含むパッケージを、すべて込みの単一価格(定価26,800円)で購入することが可能となった。
さらに、Affinity Publisher 2 iPad版もリリース。これによってmacOS、Windows、iPadOSで利用できるアプリのコアスイートが完成した。
Affinity Designer 2の新機能(抜粋)
ベクターワープ
あらゆるアートワークやテキストに非破壊ワープを適用できる。十分にカスタマイズ可能なメッシュを選択するか、円弧、パースペクティブ、魚眼、渦巻きなどのプリセットを使用することが可能。
ナイフツール
あらゆるシェイプ、曲線、テキストを、すばやくコンポーネントにスライスできる。スタビライザーでさらに精度を高め、シザー機能でカーブの任意のノードやセグメントをクリックして分割することが可能。
X線ビュー
新しいビューモードでは、作品のメークアップが表示され、複雑なアートワークの中から特定のカーブやオブジェクトを選択することが可能。
Affinity Photo 2の新機能(抜粋)
非破壊的RAW現像
データを破壊しないでRAW現像を行うことができるようになったため、ファイルにレイヤーや調整を加えたあと、いつでも現像設定に戻ることが可能。ファイルサイズを小さくするには、ドキュメントファイルに埋め込むか、外部にリンクするかを選択する。
ライブマスク
下層の画像のプロパティにもとづいて自動的に更新される新しいライブマスクで、強力で非破壊的な多数のワークフローを構築できる。
色相範囲
画像内で特定の色にもとづいたマスクを作成し、調整やエフェクトを適用したり、選択した色相の自動生成されたマスクにペイントしたりできる。
明度
特定の輝度範囲、たとえばハイライトやシャドウの特定の範囲(またはその中間)をマスクして、そのエリアに制御された調整を適用することができる。
JPEG XLのインポート/エクスポート
Affinity Photoは、フルHDRディスプレイを完全にサポート。JPEG XLのサポートにより、とくにウェブブラウザでのサポートが拡大されているフォーマットへのエクスポートが可能になったため、あるユーザーがAffinity Photoで見たものを別のユーザーが利用することもできるようになった。
Affinity Publisher 2の新機能(抜粋)
書籍
個々のPublisherドキュメントを章として組み合わせてひとつの長い作品を作成したら、ページ番号、目次、索引、スタイルを自動で全体に同期することが可能。作業に関わるチームは、全体をまとめる前に各自のセクションで個別に作業できる。利用は、デスクトップ版のみ。
オートフローの配置
必要な画像がすべて収まるまでドキュメント全体で自動で繰り返される単一のレイアウトを作成。また、画像の繰り返し回数を指定して高度なテンプレートを設定できるため、数回クリックすることで複数のバリエーションを作成できるようになる。
パフォーマンス
とくに大きなファイルや画像が多数配置されている大きなサイズのドキュメントを処理する際のメモリの取り扱いを見直し、大幅なパフォーマンスの向上を実現した。
iPadバージョンの新機能(抜粋)
iPad版のすべてのアプリには、ほぼすべての新機能が追加されているが、UIには次のようなiPad限定の機能強化も含まれている。
クイックメニュー
3本指でスワイプすることで、クリップボードオプションや9種類のカスタマイズ可能なショートカット操作に瞬時にアクセスできる。
コンパクトモード
レイヤーとブラシパネルで利用できる新しいモードによって、これらのパネルを開いたまま、ドキュメントの領域を最大化することが可能。
iPadOS 16対応
すべてのiPad アプリは、iPadOS 15 以降に引き上げられたメモリ制限を利用できるように最適化されている。また、iPadOS 16 のユーザーは、新しい仮想メモリスワップによるメリットも活かすことができ、大きなサイズのドキュメントの処理パフォーマンスを向上させることができる。