三井デザインテックと、PocketRD、マクニカ、ハイラブルは、メタバース(バーチャル空間)を活用した新たな働き方の可能性を検証する実証実験を三井デザインテック本社オフィスにて実施し、メタバース会議の有効性を可視化した。
昨今、コロナ禍を経てリモートワークが広く定着した一方で、リアルオフィスへの出社を前提とした働き方に回帰する企業も増え、人々の働く場はますます多様化している。
三井デザインテックは働く場としてのバーチャル空間には、「イノベーションと創造性を促進する効果がある」と仮定。そこで同実証実験では、バーチャル空間とリアル空間におけるコミュニケーションが、それぞれどのような目的において高い効果・満足度が得られるのか、三井デザインテックが独自に定めた働く場における行動「10のアクティビティ」(三井デザインテックがこれまでのABWの研究を基に独自で定めた働く場における個人およびグループのすべての活動を10種類に分類したもの)に沿って検証をおこなった。
今回の実証実験では、メタバースの構築技術を有するPocketRD と、脳波分析に強みを持つマクニカ、会話分析を得意とするハイラブルの知見を掛け合わせ、バーチャル空間やリアル空間の各々が持つ働く場としてのメリットを検証。その結果、アイデア創出を目的とした会議におけるメタバースの有効性を可視化し、合意形成を目的とした会議とリアル空間との相性の良さを確認した。
実験方法
リアル空間をメタバース上に再現し、同じ条件のもとに会議を実施。会議の内容を脳波計測・会話分析の定量データと参加者アンケートによる定性データから分析をおこない、検証した。
連携企業の役割
- PocketRD社の技術による、現実のビジネスシー ンを想定した写実的なメタバースの構築と参加者の素顔に近いアバター作成。
- 脳波の反応を利用したBeam Me Up社製感情分析ソフトウェア、ハイラブル社製会話測定器による定量データの収集。
検証結果
メタバースについて
- メタバースはリアル空間と比べて参加者の発言量が均等に近いことが、会話分析データで確認で きた。このことからメタバースでは、相手の表情が見えないため、顔色を伺わず率直な発言ができると考えられる。
- 脳波計測データからも、メタバースはリアル空間と比較して会議への注意散漫度が低いことがわかった。メタバースでは外部の情報が遮断されるため、より議論の中身へ集中しやすいと推測される。
- 参加者アンケートでも、メタバースでは「画期的なアイデアがひらめいた」と答えた割合が大き く、メタバースと「拡散打合せ」との相性の良さが明らかとなった。
リアル空間について
- リアル空間では、会話分析の結果からメタバースに比べて会議の参加者がお互いの間を読み、相手の表情を見ながら議論を進めるため、ファシリテーターが出現する可能性が高く、発話量に偏り が出やすいことが判明した。
- 実際にアンケート結果からも「効率的な議論ができた」の割合がメタバースよりも高くなり、リ アル空間は「収束打合せ」と相性が良いと考えられる。
三井デザインテックでは今回の実証実験の結果を踏まえ、リアル空間と相補的なメタバースの実現を目指し、拡散打合せに特化したメタバースを構築中。