悲願だった「水」の販売
2016年5月、LOHACO 初となるオリジナルのペットボトル天然水LOHACO Waterの販売が開始された。最初に登場したのは、2Lペットボトルの5本入りだ。
「オリジナルの水を販売する」。これはアスクルとしての悲願であった。だが、2Lのペットボトルが6本入って480円というように、水はもともとの価格が安い。さらに、6本入りケース品はほかの商品と同梱できず単独で配送されるため、ECで販売すると物流にかかるコストが高くなり、ビジネスとして成立しづらくなるのが難点であった。そこでLOHACOは、買いあわせやまとめ割など、水と一緒にほかの商品も購入してもらい、ひとつの箱で運べるようにすることで、その問題を解決しようと考えたのだ。
そこで、注目したのが梱包の形。日本の工場で生産されるペットボトルは2列×3本が通例であったが、そのまま箱に同梱するとバランスが悪く、なかで商品が動いてしまう。あえて箱をなくした3本セットを試した際には、箱のなかでぐらつき、同梱されていた商品がつぶれてしまった。また安定感だけでなく、配送するドライバーの負担も考え、低重心で運びやすいことも重視していた。そんな風に試行錯誤を重ねていった結果たどり着いたのが、5本入り1列というこの形だ。
箱の底面におけば、その上にほかの商品を重ねて同梱することができる。これにより商品を購入する消費者にとっても、受け取りが楽になる。また、自宅でも家具のすきまに収納できるといったメリットが生まれたのだ。
もちろん、運びやすさや収納のしやすさだけがウリではない。LOHACO Waterの採水地は日本百名山でもある群馬県吾妻郡嬬恋村の四阿山(あずまやさん)の麓。おいしい天然水を届けるため、発売のおよそ9ヵ月前に嬬恋銘水株式会社をアスクルグループに迎えたことからも、LOHACO Waterへのこだわりが感じられるだろう。
「ラベルレス」にたどり着いた理由
LOHACO Waterが、家庭での収納のしやすさなどからLOHACOの飲料カテゴリーで不動の人気を誇っていた2018年7月、410mlのペットボトルが生まれた。まずこのペットボトルで目がいくのは、ラベルレスであること。410mlペットボトルのマーチャンダイジングを担当していた石井才さんは、当時をこう振り返る。
「コンビニやスーパーなどで販売される場合、商品を認知してもらうためにラベルに商品名や特徴などを表示する必要があると思いますが、ECで販売する商品だと商品の魅力はウェブ上で表現することができる。お客さまに気づいてもらうためのパッケージは必要ないのではないか、というところからラベルレスを検討し始めました」(石井さん)
1箱20本入りのこのペットボトルのデザインは、ラベルがなくても「良いものを持っている」、「おしゃれ」と感じてもらえるよう、スウェーデンのデザイナー集団、ストックホルム・デザイン・ラボが担当。この20本のなかには、滝、雫、霧、雪といった水が生まれるまでの過程をモチーフに、それぞれ2種類ずつ、計8種類がランダムに用意されている。ボトル自体にデザインが施されているため、ユーザーからは、「会議の場や自宅でのパーティーなどでも、どれが自分の水なのかをスマートに認識することができる。大人数に配布する際も取り間違いを防ぐことができるので便利」といった声が寄せられているそうだ。
さらに、廃棄の際にラベルのフィルムを剥がす必要もなく、余計なゴミを出すこともない。環境や使用後にまで配慮した設計も、ユーザーにとってメリットのひとつだろう。
一方、パッケージに原材料などの詳しい情報が示されていることが多いが、このペットボトルにおいてその役割を果たしているのは黒いキャップだ。この天面にある2次元コードを読み込むと商品紹介サイトへ遷移し、商品の詳細な情報を把握することができる。品質を気にかけるユーザーの不安も、しっかり取り除く設計になっているのだ。