“美しい”ウェブデザインの5条件
最初に登場したのはコンセプター/グラフィックデザイナーのカワセタケヒロさん。「“タイポグラフィ”を怖がらないために」がテーマだ。
「タイポグラフィって、タイプ(TYPE)とグラフィ(GRAPHY)にわかれますよね。タイプは活字、グラフィは画法や書法などを指す言葉です。最近は、印刷技術に限ってだけではなく、ものすごく平易に言うと、デザインの中で文字を使うこと全般をタイポグラフィと言っていいのかもしれない。もっというと、文字を扱うことそのものをタイポグラフィを呼ぶのかもしれない。明確な定義は、実はないんです」
カワセさんは、文字の基本やフォントの成り立ちをはじめ、「ベースライン」「エックスハイト」といった用語や、文字組み、紙とウェブの制作工程の違いなどについても解説。本イベントにおけるタイポグラフィの共通認識を統一した。
その次に登壇したのは、アートディレクターやインターフェイスデザイナー、グラフィックデザイナーとして活躍する長谷川弘佳さん。
セッションのテーマは「美しいものを作るために“我々は何ができる”か」。本セッションでは「文字を扱うひとりのデザイナーとして、私がいちばんの目標に掲げている『美しいものを作ること』の片鱗をお伝えしたい」としたうえで、自身が考える“美しい”ウェブデザインの5つの条件について紹介した。
- 全体を通して意図が明確に表れていること
- 機能的に不自由せず、快適に操作できること
- 造形的に美しくあること
- 視覚的、体験的に飽きないこと
- 文字、写真、言葉がそれぞれの機能を果たしながらも、一体となって全体から何か伝わってくるものがある
「4つめはとくに気をつけているポイントです。というのも、ウェブサイトは基本的に何ページもあるものなので、映像と同じような気分で私は作っています。トップページがあって、その中に詳細ページがある。その流れをすべて同じような構成にしてしまうと、飽きることもあると思うんですよね。どんなにコンテンツが素晴らしくても、見た目が単調すぎて飽きてしまうのは、見ていても読んでいてもあまり楽しくない。それはとてももったいないので、視覚的にも体験的にも飽きないようにということは、とても心がけています」
このポイントを前提に、長谷川さんがアートディレクションとデザインを手がけた「サン・アド」のウェブサイト制作を例に挙げながら、その制作過程を解説。最後にセッションタイトルに対する自身の答えを明かし、セッションを締めくくった。
「私がやっている試行錯誤では、文字情報を伝えるためのタイポグラフィを用いながらも、機能、構造、共感、時間軸、動き、体験など、すべてが一体となる佇まいを作り上げることを目指しています。そしてその裏にあるのは、汗。このなかに、試行錯誤や微調整、工夫、経験値、知識などのすべてが詰まっている。だからこそ、そのすべてが調和したときに、人を魅了するような美しいものがきっとできると私は信じています。まだそれができているとは思わないですが、そうなればいいなと思っています」
続いて、「バーティカル・グリッドでもっと深まるWebタイポグラフィ」というテーマで登壇したのは、日本デザインセンターでデザイナーとしてウェブデザインの実装やモーショングラフィックなどを手がける後藤健人さん。本セッションでは縦のグリッドを「バーティカルグリッド」と定義し、ルール化による精緻なウェブタイポグラフィの概念や、具体的な実施方法について解説した。