ターゲットから考える "良い"パッケージデザインに辿りつくためには

ターゲットから考える "良い"パッケージデザインに辿りつくためには
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2020/08/11 10:00

 デザインの中でも身近に溢れ、生活の中に溶け込んでいる存在でもあるパッケージの基礎について、本連載ではパッケージデザイナーの小林ユウスケさんに解説していただきます。第2回となる今回は、「ターゲット」をキーワードに、良いパッケージデザインとはなにかを考えていきます。

 こんにちは!前回はパッケージデザインのはじめの一歩を踏み出すべく「パッケージとはそもそもなんだろう?」ということからスタートし、その役割や機能、そして「包むこと」についても考えていきました。

 2回目となる今回は「ターゲット」をカギに、“良い”パッケージデザインについてお話していければと思います。

 実際にデザインを進める際はもちろん、良いパッケージデザインがなにかを理解していなければ、良いデザインを選ぶこともできません。難しそうなテーマではありますが、「さまざまな角度からの視点」を意識し、一緒に考えていきましょう。今回はどんな「!」や「?」が見つかるでしょうか。

 では本題に入る前に、自分が良いと思うパッケージデザインをまずはひとつ思い浮かべてみてください。

 皆さんはどのようなものが思い浮かんだでしょうか。

 Appleのように、製品にたどり着くまでの体験も考え尽くされ、ブランドの価値を高めるスタイリッシュなパッケージや、インスタ映えするようなオシャレなグラフィックで飾られたスイーツのパッケージをイメージした方もいるでしょう。

 このときに一般的に多くの方の基準となるのは「見た目」、つまり造形のカッコよさや美しさではないかと思います。話題になりやすいのも、またこのようなパッケージデザインが多いはずです。

 良い悪いという漠然とした指標の場合、好き嫌いの好みの話になりがちですが、実際に自らデザインし、商品として市場に出すとなるとそうも言っていられません。しっかりと売上をたて、利益を出さなければなりません。

 良いパッケージデザインとはどんなものなのかを考えるには、やはり「良いパッケージデザイン」とはなにかを知り、それを見極めて選ぶ力も求められる――。まずはこれを頭の片隅にしまい、ひとまず先に進んでみましょう。

誰のためのパッケージデザイン?

 売り物である商品は必ず、それを欲すべき「誰か」に向けて作られています。これは中身だけでなく、パッケージデザインにも当てはまります。売りたい相手、つまりターゲットに対して適切に訴求する必要があるのです。

 さて、ターゲットに適切に訴求するというワードが出てきました。これを深掘りしていきましょう。

 たとえば「お金を包み、相手に渡す」場合、お年玉の時にはポチ袋に入れ、結婚式の場合にはご祝儀袋に包まれます。御礼の場合にはのし付きの袋や封筒に入れることもあるでしょう。渡す目的と相手、TPOに応じ、形式とその中身(今回であれば包みと金額)が変化します。

 これは、商品のパッケージデザインにおいても同じことが言えます。その商品が置かれる場所や使用されるシーンや実際に使う人の顔、つまりターゲットを想像することが、デザイン制作を進めていくうえでも非常に重要なカギとなります。

 これらを考えるときには、広告やCMを参考にしてみると良いでしょう。

 各商品の使用されるシーンやターゲット、メッセージがわかりやすく描かれています。たとえば飲み物のCMで、それをおいしそうに飲んでいる場面や、商品を片手にみんなで楽しんでいるシーンが描かれているCMを想像してみてください。「この商品を手に入れるとこうなることができますよ」というイメージをわかりやすく伝えていますよね。もちろんすべてのCMがそうとは言えませんが、代表的なひとつの形式だと思います。

 さらにテレビCMの具体例を思い浮かべながら考えてみましょう。

 水分補給飲料、という言葉を聞くとどのようなものを思い浮かべるでしょうか。大塚製薬の「ポカリスエット」やコカコーラの「アクエリアス」、サントリーの「グリーンダカラ」に経口補水液などがありますよね。

 それぞれ味の違いはあれど、どの商品も水分補給をウリのひとつにしています。ですが、飲用シーンやターゲットは異なります。

ポカリスエット

CMでは「渇きを力に変えてゆく。」というキャッチコピーのもと、学生をメインに青春が描かれています。親子での飲用シーンもあり、子どものためにという側面もあわせて打ち出しています。

 

アクエリアス

「全力っておいしい。」というコピーで大谷翔平選手をCMに起用し、スポーツシーンにおける水分補給を想起させています。

グリーンダカラ

CMでは、かわいらしい女の子「グリーンダカラちゃん」というキャラクターを起点に、ユーモラスに水分補給を伝えています。

 どの商品においても、使用するシーンと人がわかりやすく描かれていることがおわかりいただけるかと思います。

 今回挙げた例のように、「広告のようにパッケージではいろいろ伝えられない」と思う方もいるかもしれません。

 ですがいまは、パッケージデザイン、広告、SNSなど、雑誌やテレビなどのメディアに限らず、情報を伝えることができる媒体はさまざま。商品単体で伝えるのではなく、役割を分担し、それぞれの媒体の長所を最大限に活かしていくことが、パッケージデザインそのものの質にもつながっていくのではないでしょうか。

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