既存事業を新規開発の手法でリニューアル 新生「FINDJOB!」誕生の軌跡をPMとデザイナーが語る

既存事業を新規開発の手法でリニューアル 新生「FINDJOB!」誕生の軌跡をPMとデザイナーが語る
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2020/11/18 11:00

 1997年にIT・Web業界に特化した転職サイトとしてリリースされた「Find Job!」が、今年9月にフルリニューアルを行った。コンセプトやサービス名称・表記、ウェブサイトの刷新、新機能の追加など、これほど大規模な抜本的リニューアルはサービス開始以来のことである。老舗転職サイトの23年にして初のフルリニューアルはどのように行われたのか。その背景には、チームメンバーが壁にぶつかりながらも乗り越えてきたたくさんの試行錯誤があった。

新コンセプトの軸は「仕事探しの不安解消」 企業とのマッチ度の数値化も

 転職したい。そう考えたときに、多くの人はまず転職サイトを閲覧するのではないだろうか。

 ミクシィ・リクルートメントが運営する転職サイト「Find Job!」は、1997年にサービスの提供を開始して以来、IT・Web業界に特化した転職サイトとして多くの求職者を支えてきた。Find Job!が生まれた当時は、多くの求人媒体は紙であり、求人の作成から掲載、応募などすべてがウェブだけで完結するのはFind Job!が先駆けであった。

 だが、IT・Web業界における転職市場の変化は激しい。およそ23年にわたってサービスを運営してきたからこそ、時代の流れに対応しきれていない部分もあったようだ。今回のフルリニューアルプロジェクトの前にも、Find Job!には何度か大きな開発改善やサイトのデザインリニューアルが行われてきた。またビジネスモデルにおいても、採用が上手くいった場合に所定の費用が発生する「成功報酬型」が主流のなか、Find Job!が採用していた広告の掲載に対し費用がかかる「掲載課金型」の仕組みそのものが、時代とマッチしづらくなっていた。

 そんな状況を打開する一手としてサービスの根幹から見直すための「Find Job!フルリニューアルプロジェクト」が始動する。2018年11月ごろのことだ。

 そのプロジェクトに携わるべくミクシィ・リクルートメントに加わったのが、今回話を聞いたプロジェクトマネージャー(以下、PM)をつとめた上月健成さんとデザイナーの成智恩(ソン ジウン)さんだ。前職では制作会社でウェブサイトのデザインに携わっていたソンさんは、リニューアル前のFind Job!の印象をこう振り返る。

「デザインリニューアルは行ってきていたのですが、20年以上運営しているサービスですし、まだまだ昔の画面を使っているページも残っている状況でした。競合サービスが次々とトレンドに合わせたデザインリニューアルを行っていく中、このままではいけないという危機感を感じていました」

 IT・Web業界に特化していること、またスピーディーに求人掲載ができ、ウェブで完結することをサービス開始時から一貫してうたってきたものの、それだけで差別化することはいまの時代には難しい。だからこそ「ほかのサービスが掲げていない明確なコンセプト」が必要だと上月さんは考えた。

「リニューアルの軸に置いたのは『不安』です。ITがこれだけ進化した状況下でも、転職活動をスタートしてから新しい会社に入社するまで、求職者には多くの不安がつきまといます。フェーズごとにさまざまな不安がありますが、その根本にあるのは情報不足だと思っています」

 求職者の不安を解消したいという思いは、新たに制定されたコンセプト「IT業界に不安のない仕事探しを」にも表れている。公平性と透明性をあげ、企業側、求職者側それぞれがもつ不安を解消したうえで採用活動ができるプラットフォームを目指す――。

 それを成し遂げるための目玉としてリリースされたのが、求人と求職者のマッチ度が数字でわかる機能だ。求職者の希望条件と求人内容、求職者のスキルと求人の応募条件、このふたつがどれくらいマッチしているかを数字で知ることができる。

「求人サイトには、会社の理念や思い、雇用条件などの情報がテキストで並んでいることが多いと思うのですが、文章のままだと求職者は各企業を比較しづらい。そこで、企業Aと企業Bのどちらがより自身に適しているのかをわかりやすくするべく、その企業とのマッチ度合いを数字で提示するようにしました。

また、求人情報を比較しやすくするために、企業側がフリーテキストで入力する欄を大幅に減らし、必要な項目をテンプレート化しました。これにより求職者は、いくつかの企業を同じ軸で比べやすくなります」(上月さん)

 入社してすぐという求職者に近い目線で本プロジェクトに加わったからこそ、ソンさんは「手間を減らすこと」にこだわった。

「私自身、転職活動中はひとつの媒体だけでなくさまざまなサービスを利用していましたが、そのたびに同じ情報を入力することがとても億劫だったんです。そこで、情報を入力するのではなくボタンで選べるようにしたり、スライドバーで入力できるようにするなど、少しでも手間を減らすにはどうしたら良いか、を常に考えていました」