既存事業を新規開発の手法でリニューアル 新生「FINDJOB!」誕生の軌跡をPMとデザイナーが語る

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2020/11/18 11:00

サービスロゴの刷新も 大規模な既存サービスをリニューアルする難しさとは

 今回ミクシィ・リクルートメントが行ったのはサイトのリニューアルだけではない。サービス名称と表記も「Find Job!」から「FINDJOB!」に刷新し、サービスロゴも新しく生まれ変わった。

「サービスの表記も、英語は大文字にし、FINDとJOB!の間のスペースもなくしました。リニューアル前の名称である『Find Job!』は、英語として正しいものではありません。そこで、『Facebook』のようにふたつの単語をつなげることで、これからは『FINDJOB!』という固有名詞として認識されることを期待しています」(ソンさん)

 だが、たったふたりのデザイナーですべての画面デザインを進めていたため、リニューアルのプロジェクトと同時にロゴを刷新することは至難の業だった。「リニューアル完成時には既存のロゴでもいいから、今はサイトのデザインを優先してほしい」とチーム内から声が挙がることもあったとソンさんは言う。

「ですが、ロゴはサービス全体のデザインを左右するとても大切な要素ですし、やはりデザイナーとして諦めたくなかったんです。そのためひたすらラフを描くことと並行し、『ロゴが決まらないとサービス全体のデザインも定まらない』ということをメンバーに都度説明するようにしました。その積み重ねによって、少しずつ周りにも理解してもらえるようになったと思います」(ソンさん)

 今回のリニューアルプロジェクトで特徴的なのは、既存サービスの“リニューアル”でありながらも、システムやビジネスモデルは新規サービスのようにイチから開発したことだろう。上月さんがもっとも苦労したと振り返るのもこの点だ。実際に行っていることは新規サービスの開発だが、既存サービスの機能も踏襲しながら開発を進めなければならなかったからである。

「新規サービスの開発といえば、まずはサービスをミニマムかつスピーディーにリリースし、ユーザーの反応を見ながら改善していく形が一般的だと思います。ですが、今回は既存サービスのリニューアルという立ち位置のためそういった手法を用いることができず、とてもやりづらさを感じていました。新規サービスの開発手法をとりながらも旧版から踏襲する仕組みや機能がたくさんあり、ジレンマに陥ることも多かったです。

また、ビジネスモデルも大きく変更したので、求人制作のライターさんや求人広告の販売代理店、連携サービス、といったステークホルダーにどう説明していくかといった点も悩みのひとつでした」

 とくに関係各所への説明は、ひとりでは対応しきれないと判断。上月さんは、旧Find Job!の運用チームにもサポートを依頼する。

 ただ、最初から気兼ねなく依頼できる関係性があったわけではない。フルリニューアルの開発チームと運用チームが明確にわかれていたためコミュニケーションがとりづらかったり、全体像を把握していながらも、上月さん自身がメンバーに共有するべき項目を整理できていない部分もあった。そういった状況を改善するために、上月さんは細かな内容でも共有することを徹底。その積み重ねからか、徐々に両チームの連携もとりやすくなり、プロジェクトも一気に前進していく。

 開発チームと運用チームで任せるべき部分を遠慮なく任せる関係が構築できたことで、ステークホルダーにも説明ができる体制を整えた。

「正直なところ、マンパワーに頼ることになったとは思うのですが、最後は全員の気持ちをひとつに進めることができました」(上月さん)

今後は「採用候補者」のよりよい体験へ注力

 2020年の9月にフルリニューアルした新生FINDJOB!。これから取り組んでいきたいのはサービスのアップデートだけではない。「CXの向上」をキーワードに、求職者が“IT業界に不安のない仕事探し”をするための啓蒙活動も行っていきたいという。

 一般的にCXとはカスタマーエクスペリエンス(Customer experience)のことを指すが、ここで意味するのは「キャンディデイトエクスペリエンス(Candidate Experience)」、つまり採用候補者の体験である。

 そう考えると、候補者に提供すべきCXを設計し実践していく主体となるのは企業側ということになるが、FINDJOB!は転職サイトの立場からどのようにこれを実践したいと考えているのだろう。

「CXの大切さを企業側に伝えるのと同時に、求職者が知りたい情報を企業側に提供してもらう仕組みやフォーマットを用意することこそが、プラットフォーマーである私たちの役割だと考えています。どの求人情報サービスよりも濃く、そして正しい情報が揃うプラットフォームを目指し、機能の追加や整備に一層取り組んでいきたいです」(上月さん)

「企業側が求職者に対する行動や情報提供の仕方を工夫することで、候補者がその企業とご縁がなかったとしても、引き続き応援したい気持ちになるなど、継続性のある関係を生むことができるのではないでしょうか。企業が良いCXを提供しやすくするためのサポートも、今後は進めていきたいと思っています」(ソンさん)

 プラットフォームだからこそできる“CX”向上を、新生FINDJOB!はどのように進めていくのか。新たに生まれ変わった老舗転職サイトの挑戦と進化に、今後も注目したい。

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