[新連載]なぜスキルを掛け合わせるべきなのか デザイナーが事業成長に貢献するための方法を解説

[新連載]なぜスキルを掛け合わせるべきなのか デザイナーが事業成長に貢献するための方法を解説
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 本連載のテーマは、「事業会社で働くデザイナーが事業の成長に貢献するためのスキルの伸ばし方」。解説してもらうのは、プログラマのための技術情報共有サービス「Qiita」をはじめとしたサービスで、戦略設計からUI作成、フロントエンド実装に携わっている綿貫佳祐さんです。初回は、スキルを掛け合わせるべき理由とデザインを軸に据えたスキルの伸ばしかたをお伝えします。

 こんにちは。Increments株式会社の綿貫(@xrxoxcxox)です。Incrementsでは、プログラミングに関する知識を記録・共有するための「Qiita」、社内向け情報共有のための「Qiita Team」、エンジニア採用支援のための「Qiita Jobs」という3つのサービスにおいて、その戦略設計からUI作成、フロントエンド実装などに携わっています。

 この連載では、デザイナーとして事業成長に貢献するためにはどのようにスキルを伸ばすと良いのかをテーマに、私の考えをお伝えしていきます。

インハウスデザイナーは領域をまたいでこそ価値を発揮できる

 個別のスキルを取り扱う前に、前提の話から始めます。

 事業会社で働くすべての人に当てはまると思うのですが、インハウスデザイナーのいちばんの使命は、事業の成長です。そのため、まずはこの使命をしっかり認識することが大切です。

 傾向として、デザイナーはクラシカルデザイン(※1)寄りのスキル習得に時間を割くことが多いように思います。もちろんそれらのスキルが大切なのは間違いないですが、インハウスデザイナーにおいてはそれがすべてではありません。事業成長のためには事業ドメインや自社サービスの仕組みを深く理解し、ときには組織そのものを変えていく必要があります。(※1:Design in Tech Report 2018のクラシカルデザイン・デザイン思考・コンピュテーショナルデザインの定義より)

 では、インハウスデザイナーが価値を発揮するためにはどのようなスキルが必要なのでしょうか。私は、下記のような複数のスキルを掛け合わせるのが効果的だと考えています。

  • デザインの制作スキル
  • 制作スキルを抽象化したスキル
  • デザイナーの周辺領域のスキル

 その中でも今回の記事では、「デザインをスキルの中心に据える」をテーマにお伝えしていきます。

デザインをスキルの中心に据えるとは

 デザイナーなのだから、スキルの中心にデザインがあるのは当たり前なのではないかと思われる方もいるかもしれません。しかしあえて最初の記事でとりあげたのは

  1. 深く掘り下げたスキルがあると後から領域を広げやすい
  2. デザインスキルを習得する流れが他の領域でも応用しやすい

というふたつを説明したうえで、話を進めていきたいからです。

軸としてひとつのスキルを掘り下げる

 ひとつめにお話したいのは、複数のスキルを掛け合わせるといっても軸があるかどうかが大きな差を生む、という話です。

 スキルを掛け合わせることで生まれる効果は、あくまで1つひとつのスキルが高い場合に成り立ちます。どれも中途半端では、相乗効果は見込めません。

 またひとつのスキルが高くなっていくと、自然と「すぐ近くの領域」の知識もついてきます。たとえばウェブデザインを学ぶにあたって、HTMLやCSSを避けては通れない、といった具合です。まったく関連性のないスキルと比べれば、近い領域のスキルを掛け合わせる方が簡単なのは想像にたやすいのではないでしょうか。

 複数のスキルを身につけようとして、自分の専門とはまったく別ジャンルを学ぼうとする方もいるかもしれませんが、まずは軸を設定し、そこを中心に領域を広げる意識が持てると良いでしょう。

掘り下げたデザインスキルを応用する

 ふたつめのデザインスキルを習得する過程の話は、デザインという行為の特性からきています。グラフィックやウェブ、リサーチなど、デザインにまつわる営みはおよそ以下のような流れで実施されています。

  1. 対象をよく観察し、情報を得る
  2. 得られた情報を整理し、焦点を当てるもの決める
  3. 相手に伝わって欲しい内容を、伝わりやすい形式に変換してアウトプットする

 そのため、デザインスキルが身についている=上記の流れが身についている状態と言えるわけです。

 とりわけ重要なのは、1の観察と2の整理のフェーズです。この流れを理解していると、初めて触れる分野であっても「何がわからないかがわからない」状態から早めに卒業することができます。

 しかしひとつめの話でも挙げたように、デザインスキル自体が中途半端では意味がありません。まずはたくさんの繰り返しを経てこれらのデザインスキルを定着させることで、ようやくほかの領域へと応用できるのです。始めのうちは、「ゆくゆくは上手に活用していこう」と認識できていればOKです。

 これらふたつの内容で、「デザインだけでは価値が発揮できない」、「デザインはほかのスキルの土台でしかない」と言いたいわけではありません。

 何かのスキルを身につけるにあたって、毎回ゼロから学びをスタートするには人生は短すぎますが、そんな中でデザインのスキルは「強くてニューゲーム(※2)」を実現するポテンシャルがあるように感じています。その技術を上手く利用しない手はないと思うのです。(※2:ロールプレイングゲームなどにおいて、クリアした際のレベルやアイテムを引き継いで新しくゲームを始められるシステム)

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