ユーザーはデザイナーだけではない 「ユーザー」と「目的」からはじめる業務アプリのデザインシステム

ユーザーはデザイナーだけではない 「ユーザー」と「目的」からはじめる業務アプリのデザインシステム
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 株式会社SmartHRのプロダクトデザイングループが、人事労務領域を扱うソフトウェア「SmartHR」開発で培った知識と経験を活かし、業務アプリケーションにおけるデザインアプローチの考えかたをお伝えしてきます。第5回のテーマは「業務アプリのデザインシステム」についてです。

 こんにちは。SmartHRプロダクトデザイングループの@versionfiveです。

 前回は、プロダクトのデザインにおける質の向上と効率化をたすける「命名」についてご紹介しました。今回も「プロダクトデザインの質の向上と効率化」をテーマに、その手段のひとつである「デザインシステム」に関してお伝えします。

 デザインシステムをこれから作りたいと考えているプロダクトデザイナーに向けて、業務アプリであるSmartHRのデザインシステム「SmartHR Design System」の立ち上げを事例とし、「業務アプリのデザインシステムのはじめかた」に焦点をあてて進めていきます。

 なお、SmartHR Design Systemには「SmartHR(全体)のデザインシステム」をブランドとプロダクトのどちらもカバーするものにしていくため、プロダクトデザイナーだけでなくコミュニケーションデザイナーも携わっていますが、本記事ではプロダクトに絞ってお話しします。

SmartHRのデザインシステム「SmartHR Design System」(2021年3月現在)
SmartHRのデザインシステム「SmartHR Design System」(2021年3月現在)

デザインシステムとは

 デザインシステムに規格や明確な定義はなく、デザインシステムの対象によって含まれるコンテンツが異なります。ブランドアセットをまとめた社内向けのものもあれば、自社プロダクトのための社内向けのもの、プラットフォーム上でサービスをつくる開発者向けのものなど、さまざまなデザインシステムが公開されています。

 プロダクトにおけるデザインシステムの場合は、次のようなコンテンツを含むことが多いでしょう。

出典:Product Unicorn「Design systems, style guides, pattern libraries. What the hell is the difference?」

出典:Product Unicorn「Design systems, style guides, pattern libraries. What the hell is the difference?

 プロダクトをデザインするためのツールやプロセスをまとめているものが典型的ですが、それらを提供しなければいけないという決まりはなく、デザインシステムを作る目的や組織体制によってコンテンツが異なっています。

デザインシステムのユーザーと目的を明確にする

 他社のデザインシステムを眺めていると、どんなコンテンツがラインナップされているかに注目し「自分たちもこんなキレイなものを作りたい!」と考えてしまいがちですが、デザインシステムはあくまで手段のひとつです。

 「何を用意するのか」の前に「デザインシステムのユーザーは誰か」、「なぜデザインシステムを作るのか」を考えることが重要です。

 デザイナーの作業効率化や、一貫したUI設計をするためにデザインシステムを作り始めるのがよくあるケースかと思いますが、デザインシステムのユーザーはデザイナーだけでしょうか。

 たとえば、業務アプリのデザイナーであれば、最終成果物はデザインモックではなくプロダクトになると思います。そのような前提をふまえると、デザインシステムはチームでよりよくプロダクトを作るために機能すべきだと考えることができます。この場合、「デザインシステムのユーザー」は、デザイナーやエンジニアなど社内の開発チームになるでしょう。

 「デザインシステムのユーザー」をデザイナーの業務だけでなく広くとらえ、下記のような項目を考えながら、「デザインシステムによって解決したい課題と目的」の定義から始めることをオススメします。

  • デザインシステムのユーザーは?
  • ユーザーの抱えている課題、ニーズは?
  • それらの背景は?(組織の状況、体制、など)
  • 上記を踏まえたデザインシステムを作る目的は?

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