チームの学びを“モチベーション”で科学する――学習効果を飛躍的に高めるポイントとは

チームの学びを“モチベーション”で科学する――学習効果を飛躍的に高めるポイントとは
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 本連載のテーマは「チームの壁」。リンクアンドモチベーションで中小ベンチャー企業向けの組織人事コンサルティングに従事し、そののちデザイナーへと転向した辻井さんがチームづくりにおいて陥りがちな落とし穴や心がけるべきポイントをお伝えします。第2回は「学び」についてです。

 前回の記事では、「チーム立ち上げの掟」と称してチームづくりの基本となる考えかたをお伝えしました。今回は、「学び」をテーマにお伝えします。

 メンバーが圧倒的スピードで成長し、チームの生産性がどんどん高まっていく。そんなことが実現できたら、とても理想的です。一方で、スキルアップや能力開発に関する取り組みが上手くいかない、という課題も組織においては頻発します。

  • 緊急度の高い業務に追われて、スキルアップに時間を使うことができない
  • 勉強会や読書会を始めてみたものの、自然消滅してしまう
  • 一部の熱心な人しか巻き込めず、チーム全体に波及させることが難しい

 こういった悩みを抱えている方も多いのではないでしょうか。育成施策を軌道に乗せるためには、「学びとモチベーション」の関係性を正しく理解することが必要です。

「仕組みで学ばせる」のではなく「学ぶ環境をつくる」

 『人材を“育てる”のか、人材が“育つ”のか』

 言葉遊びのようにも見えますが、このふたつには大きな差があります。それは、「外発(=外側からの圧力)」と「内発(=内側からの意欲)」の違いです。同じ経験やインプットから得られる学びの総量は、個人の主体性やモチベーションによって大きく異なります。

 たとえば、業務において何らかのトラブルが発生したとしましょう。

 ある人は、上司と相談してトラブル対応をしました。ある人は、上司と相談してトラブル対応をしたうえで、同様の事態が起こったときに備えて対応方法を記録に残しました。ある人はさらに、「なぜトラブルが起きてしまったのか」の原因分析を行い、再発防止策を上司に提案しました。

 この違いを生み出すのは、「目的意識」と「モチベーション」です。同じ物事を通じて得られる学びは、学ぶ人次第で1にも10にも100にもなります。だからこそ、「学ぶ」ことに対する内発的動機を高めることが、成長速度を上げるために不可欠なのです。

「何を学ぶのか」をしっかりと定める

 ここからは、「内発的動機で学ぶチーム」をつくるためのポイントを掘り下げていきます。まず考えるべきは、「何を学ぶのか」です。スキルアップと一口に言っても、スキルが指す対象は幅広く、スコープの定義が不十分になりがちです。

 ここで、ビジネスパーソンに求められるスキルを体系的に整理してみましょう。次の図をご覧ください。

 ビジネスパーソンとしての基礎となるのが「スタンス」の部分で、その次に来るのが「ポータブルスキル」です。これは、業種や職種に関わらず求められる“持ち運びのできる”スキルを指していて、「対人力(コミュニケーション)」「対自分力(セルフコントロール)」「対課題力(ロジカルシンキング)」の3つから成り立ちます。

 そして、いちばん上に来るのが「テクニカルスキル」で、仕事内容や職種に応じて求められる専門的な知識やスキルを指します。

 年次や経験の有無、役割期待に応じて、どのスキルを重点的に鍛えるべきかが変わってきます。育成施策を設計するタイミングで、まず「なぜ」「どの」スキルを強化するのかを明確にすることが重要です。

 私たちのチームでは、社会人としての年次は一定の経験を経たうえで、未経験からデザイナーに職種転向したメンバーが集まっていたため、「デザイナーとしてのテクニカルスキルをいかに向上させるか」にフォーカスして、施策を設けました。

 スキルアップというと、職種ごとの専門知識を磨くことに意識が向きがちですが、若手中心のチームであれば「スタンス」や「ポータブルスキル」を強化することも重要です。チームの能力値に応じて、注力ポイントを設計してみてください。

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