「チームづくり」がテーマの本連載、今日は「呪い」というキーワードからチームについて考えていきます。知らず知らずのうちにチームにかかってしまう呪いとはなにか。そしてどうすればそんな呪いを解くことができるのかをお伝えします。
実は私たちの身近に存在する“呪い”
“呪い”と言えば、大ヒット漫画の影響もあり、ここ数年で目にすることが増えた言葉のひとつかもしれません。元の意味をたどれば、『神仏その他不可思議なものの威力を借りて、災いや病気などを起こしたり、また除いたりする術。(出典:大辞泉)』という定義が出てきます。
しかし、“呪い”という言葉の意味合いは広がりつつあります。
- 「周りに迷惑をかけないように、自分のことは後回しでもっと頑張らなきゃ」
- 「いつ誰と会っても恥ずかしくないように、身だしなみを整えて常にきれいにしなきゃ」
- 「成果を出し続けないと居場所がなくなるから、とにかく結果を出さなきゃ」
どれも立派な心構えですし、こうした気持ちがあることで人が頑張れるのも事実です。一方で、他人の視線や周囲からの見られかたへの意識が強くなりすぎると、「~しなければならない」といった圧力は高まり続けます。過度なプレッシャーを感じたり、常に不安を感じるようになったり、自分の存在に胸を張れなくなったり……。
こんな風に、“内面化された規範”は時に呪いに転じ、その人の可能性を奪うようになるのです。
“呪い”は個人だけでなくチームにもかかる
そしてこれは、個人に限ったことではありません。数名のチームにも、数十名の部署にも、数百名〜数千名の会社にも、容易に呪いはかかります。
- 「今までもうまくいかなかったし、どうせできっこないよ」
- 「競合が強すぎて、しょせんうちの商品じゃ太刀打ちできないよ」
- 「何年も同じことの繰り返し、やっぱりうちの会社が変われるわけないよ」
そんなふうに感じたり、同僚とそんな話をしたり、チーム・会社のそういった雰囲気を察知したことは、きっと誰しもあるのではないでしょうか。「どうせ」「しょせん」「やっぱり」といった言葉に宿るネガティブな感情こそが、呪いの正体です。
それは、ときに個人のエネルギーを奪い、チームの新たな試みを断念させ、会社の変化を阻害します。
この呪いを解くことができれば、個人もチームも本来のポテンシャルを発揮して、より良い成果を生み出すことが可能になります。
“呪い”はどのようにして生まれるのか
では呪いが生まれるのにはどういった要因があるのでしょうか。大きくは3つ挙げることができると思います。
1つめは「歴史」。今までこうだった、これまでもそうしてきた、という事実の積み重ねは、「この先も同じことが続くのだろう」という予感を人に与えます。その期間が長ければ長いほど呪いは強くなり、未来への希望を感じづらくなってしまいます。
2つめは「バイアス」。バイアスという言葉は、「先入観」「偏見」「思い込み」「認識の歪み」といった意味を持っています。これは人間であれば誰しもが持ってしまうものです。数名と話しただけなのに、「うちの会社は全員こう思っている」と感じてしまったり、直接話を聞いたわけじゃないのに、「うちの経営陣には変わる気なんてない」と思い込んでしまったり……。こうしたバイアスから呪いが生まれ、バイアスが呪いを育んでしまうのです。
3つめは「感情」。行動経済学が注目を浴びるなど、「人間は決して合理的な存在ではなく、感情の影響を大きく受ける生き物である」という考え方が広く知られるようになりました。これは、「正しいかどうか」と同じかそれ以上に、「自分がどう感じるか」が人の判断や意思決定に影響を及ぼすということです。変化することへの恐れや、失敗して恥をかきたくないという感情は、ときに呪いに転じ、挑戦や前進を阻害します。