最強のデザイン組織を作る第1弾プロジェクト
ラクスルでは、2020年に発足したデザイン推進室を旗振り役に、全社員プチ・デザイナー化を見据えた「デザイン×エンジニアリング×ビジネス」連携を広げてきました。
2017年より打ち出したデザイン経営をさらに深め、最強のデザイン組織を作るには何が必要なのか――。デザイン推進室で徹底的に議論を重ねた結果、満場一致でやるべきだと決まったのが「コーポレートロゴのリニューアル」でした。
ロゴを見れば、その会社がどれくらいデザインを重視して投資しているのか、中長期的なロゴの展開を含めて企業のブランディングを考えているのかがわかります。以前のロゴからは、ラクスルの企業姿勢として読み取れるメッセージが薄く、デザイン経営を打ち出す組織として説得力がありませんでした。今後、デザイン組織の採用を強化するうえでも、すぐに着手しようとプロジェクトが動き始めました。
コーポレートロゴは、プロジェクトの序章に過ぎません。今後、会社のあらゆるタッチポイントのデザイン、各事業のロゴも手掛けていく必要がありますが、まずはもっとも大きな部分でリニューアルが成功しなければいけない。「デザイン推進室がロゴを手掛け、オーナーシップを持ってコントロールしていく」体制を作ろうと考えました。
まずはGOODとMOREの言語化から ビジュアルへの落としこみかた
まず行ったのは、ラクスルのGOOD(良い点)とMORE(課題点)の言語化でした。
プロジェクトが動き出した2021年春には、ラクスルのカルチャーを言語化しようと社内で「カルチャー・プロジェクト」が動いており、そのアウトプットがとても参考になりました。
ラクスルはここ数年、海外拠点を含め組織が急拡大しています。拡大フェーズのベンチャー企業にありがちな事態ですが、コミュニケーションの密度が薄まり、社内でのカルチャー理解に差が生じていました。そこで、ラクスルに長く在籍している人も、社歴が浅い人も共通言語が持てるようにとカルチャー・プロジェクトがスタートしていたのです。
現場のメンバーから経営陣までが集まり、ラクスルの良いところ、改善すべきところを伝え合うワークショップも開かれていました。そこで言語化された暗黙的な課題や価値は、ロゴリニューアルに強く反映されています。
議論を通じて出てきたGOODには、事業へのコミットメントの高さや、優秀な人材が集まっているところ、1人ひとりの熱量の高さが挙げられました。一方、MOREには徹底して成功確率を上げようとするがゆえの厳しさがあり、余裕が足りないという指摘もありました。
ロゴリニューアルでは、こうしたさまざまな声をキーワードに落とし込み、それを連想させる形にしていきました。たとえば、「もっと余裕がほしい」という課題からは、ロゴの文字間隔を取り余白を大事にしたデザイン案が生まれ、組織内にも余白と風通しの良さを作っていく意志を込めました。
実際に完成されたロゴは、シャープだった文字の角を取り丸みを持たせることで、優しさを表現したフォントを使用しています。これは「厳しさ」への指摘の声に応えるものでした。同時に力強さも打ち出したかったので、RAKSULをすべて大文字にし、太めのフォントでボールド(大胆)な印象を大切にしました。イタリックでおしゃれな雰囲気とは違う、存在感のあるロゴになっています。
ひとつのロゴに決まるプロセスでは、デザイン推進室のメンバーで、ブラウザ上で簡単にデザインができるツール「Figma」で、その場でビジュアルを描きながらチューニングしていきました。デザイナー間の議論はもちろん、エンジニアのメンバーに「このロゴから、エンジニアが活躍する組織を感じることができるか」とヒアリングしたり、女性やGlobalメンバーの意見をスコアリングしたりと検証を重ねました。
CMOの田部とのディスカッションでは、「いかに読みやすく、伝わりやすいか」を改めて確認。ラクスルは創業以来のマーケティング手法として、「ラクスルで検索してもらう」ことを重視してきました。「ハコベル」「ノバセル」の事業名からもわかるように、名前を見聞きすればサービスの内容が連想できることが重要です。ロゴも、とにかく読みやすく、わかりやすく目に入ってくるように。そんなラクスルの原点を再認識する機会になりました。