「デザインがさらなる加速装置になる」 感銘を受けたふたりの思い
――まずはご経歴から教えていただけますか?
最初のキャリアはウェブデザイナーからスタートしました。私は美大出身でもないですし当時スマホもなかったのですが、この業界がこれから伸びるのではないかというミーハーな気持ちからウェブデザイナーを志し、受託制作会社に入社しました。当時はなんでも屋のようなウェブデザイナーも多かったと思いますが、私もそのひとり。コーポレートサイトなどのデザインだけでなく、ディレクションもするし、請求書の処理もするし、コードを書くこともありました。
そんななか、だんだんとUIデザイナーやUXデザイナーのような今にもつながる職種の登場やスマホの日本上陸といった機運が高まったこと、デザイナーとしてユーザーさんに直接サービスを届けたいという思いが強まったことを受け、事業会社へ転職します。SNSやソーシャルゲームなどの制作に携わったのですが、その企業が日本から撤退することに。その次の会社では今までやっていないことに関わりたいと思い、ヤフーに入社しました。ゲーム事業やYahoo!ニュース、Yahoo!検索、Yahoo!知恵袋、Yahoo!乗換案内などさまざまなサービスに携わり、デザイン責任者やデザイン部長といった役割でマネジメントも行うようになりました。ヤフーに在籍したのは、丸6年ほどです。
その後はクックパッドに転職。はじめは何を担当するか決まっておらず、いち社員として入社し、CEO室の直下の組織に入りました。結果的に最後はデザイン統括本部長という肩書のもと自身でデザイン本部をつくり、会社におけるデザイン戦略、プロダクトデザイン統括、デザイナーのマネジメント、育成、評価などを実施。クックパッドには丸3年在籍しました。
2021年夏くらいに次のステップを考え始めたタイミングで、元同僚からの紹介でnoteから声をかけてもらいました。以前からCEOの加藤さんに会ってみないかと言われていたのですが実現はしていなかったんです。ちょうどこの夏のタイミングで一度きちんと話をしたいと改めて連絡をもらい、CEO・加藤さんとCXO・深津さんと話をしました。本格的な検討を始めたのはそこからですね。
ただ、明確にCDOとして打診をいただいたわけではありません。僕自身もそこにこだわりはなかったので、何が求められていて、僕に何ができるかを重視して考えていました。
――宇野さんがCDOとしてジョインすることを決意した決定打はありましたか?
[補足]noteの組織体制について
CEO、CTO、CFO、事業開発部門の執行役員、CXOのもとに、各部署が紐付いている形。現在のデザインチームはCXOの深津貴之さんが会社全体のUXの一部として見ている。デザインチームは大まかに開発領域とブランド領域のふたつにわかれている。所属しているデザイナーは、UIデザインにかぎらずPdMも兼ねているメンバーやUXリサーチャー、専属のイラストレーターなど多岐にわたる。担当する分野に明確な区別があるというよりは、グラデーションがあるイメージ。
最初は会社とプロダクトの規模はイコールですが、会社の器が大きくなるにしたがってさまざまな役割が生まれますし、手が回らない部分もあります。そうなったときに、デザイナーの育成や組織づくりの観点からもより専門的に関わることができる人がいたほうが良いという面もありました。
ですが僕がジョインすることを決意したいちばんの理由は、CEO・加藤さんとCXO・深津さんのデザインへの思いです。
一般的に考えれば、CXOとCDOのラベルは同じような印象を与えることも多いですし、CDOとCXOどちらが良いのかという議論はよくされています。それだけに似た目線をもった経営陣が増えると考える人もいるでしょう。ですが、そんなことは関係がない。デザインの役割をもっと大きくしていきたいし、これからの会社にとってもさらに必要な存在なんだ、というメッセージをもらったんです。
それを聞いたとき、正直に言ってしまえば「すごい」と思いました。150人くらいの組織で、プロダクトも大きくふたつ。かつそれらのプロダクトが伸びているのであれば、デザインに力を入れなくてもおそらく事業成長はするはずです。僕が入らなければいけない理由はない。ですがそのうえで、デザインがさらなる加速装置になる、とCEOとCXOのおふたりが言い切るその姿勢が、なにより素晴らしいと思いました。僕もその形に共感しましたし、非常に感銘を受けました。