[新連載]70名超のデザイナーを抱えるマネーフォワード流、デザイン経営にもとづいた組織づくりとは

[新連載]70名超のデザイナーを抱えるマネーフォワード流、デザイン経営にもとづいた組織づくりとは
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2022/12/19 08:00

 「すべての人の、『お金のプラットフォーム』になる。」というビジョンに沿って、あらゆるお金の不安を解決し、すべての人がよりその人らしく生きていける世界の実現を目指しているマネーフォワード。同社には70名以上のデザイナーが所属していたり、2020年9月にはChief Design Officerのポジションを置いたりと、組織としてデザインに注力しています。そんなマネーフォワードが、デザイン組織のための取り組みについて具体例を交えながら解説。初回となる今回は、デザイン組織の仕組みを中心にお伝えします。

 こんにちは。マネーフォワードCDO(Chief Design Officer)の伊藤セルジオ大輔です。第1回目となる今回は、デザイン経営にもとづくデザイン組織の仕組みと、私たちが大切にしているデザインに対する考えかたについてお伝えします。

“デザイン”を広義に捉えるマネーフォワードのデザイン組織

 マネーフォワードは、家計簿アプリ「マネーフォワード ME」や、経理や人事労務などのバックオフィス業務の効率化を支援する「マネーフォワード クラウド」などのサービスを提供しています。

 ミッションは「お金を前へ。人生をもっと前へ。」。社名に「マネー」とあるとおり、お金に関するサービスを扱っているのですが、とくに大切にしているのは「フォワード」の部分です。ユーザーの人生や社会をもっと前へ進めるための価値提供を目指しています。そして、私たちの価値観や行動指針を示したバリューのひとつに掲げているのは「User Focus」。マネーフォワードが向き合うべきテーマには、その中心に常に「人」がいます。

 当社のデザイン組織では、デザインを「人を中心に考え、課題を解決するアプローチ」と捉えています。つまり、マネーフォワードにとってデザインとは、まさに「User Focus」を体現することにつながるのです。

 デザインの力を信じ、人に寄り添い、ときには驚きや感動を生み出す。マネーフォワードのデザイン組織は、そういった存在でありたいと思っています。当社のデザイン組織では現在、70名を超えるデザイナーが活躍しています。私たちは自らを「ユーザーフォーカスの体現者」と呼び、ユーザーによりよい価値提供を目指して長く愛されるプロダクトを生み出すために、デザイナーが活躍できる環境づくりに取り組んでいます。

デザイン経営はじめの一歩 ~経営目線を養うロードマップのススメ~

 マネーフォワードでは、経営にもデザインの考えかたを取り入れています。たとえば定期的に開催している役員合宿では私がファシリテーターとなり、デザインアプローチによる経営課題の可視化や解決支援、また抽象的な概念の視覚化を行うなどして、議論の活性化をサポートしています。

 デザイン経営に取り組みたいけれど何から始めたら良いかわからないという方にまずオススメしたいのが、ロードマップの作成です。デザイン組織で何か課題が生じる理由の一因には、経営陣と現場がつながり切れていないケースがあるように思います。各自が自分の仕事に集中していると視野が広がりにくくなるため、各デザイナーが全社を見渡すこと。そしてプロジェクトを中長期的に考える機会に積極的に参加し、経営目線を養うことができれば理想的ですが、そういった機会がなくても個人ですぐに取り組めるロードマップは、組織の全体感を中長期的に捉えるうえで非常に有効な方法です。

 上の図は私が2年前に作成したものです。すべてが予定どおりに実現できているわけではありませんが、このロードマップを「デザイン経営の設計図」として活用することで、目標達成の確度が高まった手応えがあります。たとえば目指すところに「国内ナンバーワンのデザインチーム」を掲げ、それに対して経営戦略、デザイン組織強化、プロダクトデザイン、ブランディングと観点を区切り、それぞれどういった状態を目指すか、各年にどんなアクションを起こすかを記しています。私はこれを半期ごとにアップデートしています。

 前述のとおりロードマップとは、組織の全体感を中長期的な目線で捉える、いわば「経営目線で考える」ということ。

 これを考えることで、自分の理解がどこまで及んでいるのかを再確認する指標にもなるため、目標を具体まで落とし込んで書き込むことが大切です。最初は「3年後なんてわかんないよ」となるかもしれませんが、「わからないという現状」を知ることが非常に大切です。私自身も、ロードマップを更新するたびに解像度が上がってきていると感じています。

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