数ある届けたい要素から「いちばん伝えたいこと」を考えぬく
――プレスリリースとGIFの作成は、どのように進めたのですか?
大城(FVP) 伝えたいことや動画で表現したいことなどをテキストで整理し、それをもとにリチカさんにヒアリングしていただきました。この時点で私たちもかなり整理したつもりではあったのですが、伝えたいことの多さから要点が定まらなくなってしまい……。リチカさんに「ここの優先度をあげたい」「ここは外せない」などの意見をお伝えしながら、内容をブラッシュアップさせていきました。
松尾(リチカ) お話にもあったとおり掲載したい情報がたくさんある状態だったので、伝えたいことはシンプルにGIFとして集約し、残りの情報をテキストで読んでもらうような設計にするのが良いのではないかとお伝えしました。そこでリチカから構成やコンテを作成し、ご確認いただきながら進めていきましたね。
リチカは、お客さま担当、クリエイティブディレクター、コピーやストーリーの担当、実際のGIF制作担当といったメンバーで、このプロジェクトに携わりました。要した期間としては、最初にご相談いただいてからおよそ3週間くらいだったと思います。
――プレスリリースとGIFの作成で意識していたことはありますか?
松尾(リチカ) 私自身もやってしまいがちですし、伝える側としての宿命でもあると思うのですが、プレスリリースにはいろいろな情報を詰め込みたくなるんですよね。その発信側の気持ちと受け取る側の差分をどのように調整するかという点は、第三者的なポジションだからこそお伝えできた部分もあったのではないかと感じています。
またFFGさんは九州を代表する金融機関でありベンチャーキャピタルでしたので、「伝統」と「GIFによる真新しさ」のバランス感もとくに意識しました。そのために徹底して行ったのは、「どこを伝えていきたいか」をディスカッションすること。残したいコアと、目新しさを出しながら必要な情報を伝えるにはどうしたら良いのか、をすり合わせることに時間を割きました。
大城(FVP) リチカさんとの最初の打ち合わせで「今回のリリースでいちばん伝えたいことは何ですか?」と大きな文字で書かれたスライドが映し出されたときに、やはりここをいちばん意識しなければいけないのだと痛感しました。ファンド新設を伝えると言っても、規模なのか、号数なのか、過去の出資実績といったデータなのかなどいろいろな要素があったため、見せていく順番などもお話しながら整理できました。その結果今回は、ファンド規模を最初に伝える形にしました。
――プレスリリースの反響はいかがでしたか?
大城(FVP) 今まで出してきたさまざまなプレスリリースとまったく違いました。リリースを出すと、最初の1週間はPVが伸びてもそのあと数字が下がることが一般的ですが、今回はより継続して見てもらうことができたと思います。担当者がSNSで投稿したときにも今までにない反響があったり、リリースを見た起業家の方から担当者あてに連絡も届いたりしました。これが私たちのひとつの狙いでもあったのですが、このリリースをきっかけに問い合わせなどにつながった点は非常に良かったですね。
ショート動画の波はここにも 今後求められるのは「短くわかりやすく」
――最後に、PRにおける動画活用の今後について、見解をお聞かせください。
松尾(リチカ) そもそも、企業側が伝えたいことに強い関心を持っている方は少ないと考えたほうが良いでしょう。そういった前提にたつと、情報をなるべくわかりやすく、できるだけ圧縮して伝えることが必要になりますので、時間に対する情報量が多いという点は、やはりPRにおける動画活用でも大きなメリットだと感じています。
ただプレスリリースに焦点を当てると、昔と今とではそのありかたは変わってきています。たとえば今までは、サブタイトルに「株式会社○○ 代表取締役○○」といった基本情報がメディアに届ける内容として必須でしたが、リリースの発信が一般的になった結果、メディアだけではなく、ユーザーの目にも触れるようになった。そういった背景を考えると、従来のやりかたで読んでもらうことができるのかといった点にはとても懐疑的ですし、実際に数字を見ても離脱は早い。ショート動画にも代表されるように「情報は短くわかりやすく」が求められてきているんですよね。そのためプレスリリースも、それに合わせた発信の仕方が、今後ますます必要になるのではないかと感じています。
具体的な内容については、私たちのようにモーションを動かすだけでなく、リアルなプロダクトをいろいろな角度から撮ることで、静止画だけでは伝わりきらないプロダクトの姿を見せるのも良いと思います。
くわえて、開発の背景や思いといった言葉になりづらい部分を伝えることができるのも動画ならではの価値。機能面などの情報だけでなく、その背景にある情緒的な価値をプレスリリースで表現していくことも、これからさらに大切になっていくのではないでしょうか。
――大城さん、松尾さん、ありがとうございました!