ユーザーを「クリエイター」に ミラティブ赤川氏が語る、ライブゲームが生む新たな市場と未来図とは

ユーザーを「クリエイター」に ミラティブ赤川氏が語る、ライブゲームが生む新たな市場と未来図とは
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2023/02/10 08:00

 月刊誌『日経トレンディ』が昨年12月に発表した「2023年ヒット予測ランキング」の7位にランクインした、ゲームとゲーム実況が融合したゲーム体験「ライブゲーム」。そんなライブゲームの領域で最前線を走ってきたのが2018年に創業したミラティブだ。同社は昨年11月に大規模な資金調達を実施し、独自のクリエイターエコノミーの拡大・多様化にも注力していくことも明言。ミラティブの創業者でありCEOをつとめる赤川隼一さんは、そもそもなぜ、ライブゲームを「必ずくる未来」だと感じたのか。そのとりまく状況の変化とトレンドにも触れながら、メタバースとの関係や今後の動向などについて話を聞いた。そのなかで見えてきたのは、ライブゲームだけにとどまらない、クリエイターエコノミーそのものの可能性だ。

「友だちの家でゲームやっている感じ」をオンラインで

――まず赤川さんのご経歴や、ミラティブ創業の経緯、サービスの特徴などについてお聞かせください。

2006年に新卒でDeNAに入り営業やマーケティング、グローバル展開の責任者をつとめたあとゲーム事業に携わり、その事業をMBOする形でミラティブを創業しました。

ミラティブ創業のきっかけは、ビジネスとエモーショナルのふたつの側面があります。ビジネス的には、2014年にAmazonが「Twitch」というライブ配信サービスを1,000億円で買収し、PC中心でアクティブユーザーが1億人という数字を見たときにスマホ化の可能性を感じたこと。もうひとつエモーショナルな観点では、僕自身、音楽オタクでゲームが大好きなので、そういった趣味でつながるインターネットサービスに救われてきた経験を持っていることが背景にあります。ミラティブでは「友だちの家でゲームをやっている感じ」をオンラインで再現しようとしました。僕がチャットルームで楽しんでいたように、同じゲームの話でわかりあうことができ、盛り上がるサービスを作りたいと考えたんです。

当社は、「スマホだけでゲーム実況ができる」をコアバリューとしたゲーム配信プラットフォーム「Mirrativ(ミラティブ)」の提供で成長してきました。

 

ミラティブのいちばんの特徴は誰でも簡単に配信できるところ。また、つながりができる点も大きな特徴です。たとえば今まで何も活動をしていなかった人がゲーム実況をしても、ミラティブだと見てもらうことができる仕組みにするなど、始めるうえでの敷居も低く、使いやすい。これがサービスとしての価値だと思っています。その結果ミラティブでは、配信者の比率が極めて高くなっており、アクティブユーザーの約30%は自分でも配信しているユーザー。自身で発信もするし、それを通じて仲良くなった友人の配信も見にいくという、SNS的な交流が生まれています。

そんなミラティブが最初期のユーザーに刺さったところで、2018年にアバター機能「エモモ」をリリース。これは当時流行し始めたVTuberのように、自分だけのアバターを持って顔を出さずに配信できる機能です。こうしたキラー機能を武器に順調に成長していく中で、2022年は「ライブゲーム」が次の一大トレンドだと判断し、今はこの領域に全力投資しています。

ユーザーの「手間暇かけてでもやりたい」を叶えるサービス開発

――ミラティブがサービス開発で重視していることはありますか?また開発の体制についても教えてください。

サービスづくりで大切にしているのは、「すでに熱量がある行動をいかに簡単にできるようにしてあげるか」。ユーザーを観察していると、なかにはスマホのゲーム画面を別のスマホのカメラで映しながら必死にゲーム実況をしている人もいたんですよね。そのため、それを数タップで画面共有できるようにしました。そんなふうに手間暇かけてでもユーザーがやりたいと感じる熱量の高いニーズをどう叶えるか、という点はずっと意識しています。

また、ユーザーの反応が直接見えることも、ミラティブのおもしろい点かもしれません。「こんなところにボタンがあったなんて知らなかった」「この新機能いいね」といった声がすべてダイレクトに聞こえてくるため、常にユーザーインタビューをしているような感覚なんです。ユーザーの反応をリアルに感じながらものづくりができるんですよね。

株式会社ミラティブ 代表取締役 赤川隼一さん
株式会社ミラティブ 代表取締役 赤川隼一さん

開発面でいえば、リリースまでの期間や予算が比較的コンパクトであることも特徴でしょう。最近のスマホゲームですと、1本数十億円かかる場合もありますが、ライブゲームは1本あたり1,500~4,000万円ほどで制作している。これはクリエイターにとっても貴重な環境だと思います。つまりこれによってクリエイターは「プロダクトをリリースしてユーザーの反応を受け取る」という経験をたくさん積むことができます。昨年入ったメンバーの中には、年間4本のゲームリリースに携わった者もいるなど、多くの打席に立つことができる状況になっています。しかも今は4~5人のチームで開発を行っているので、手ごたえを感じられる経験になると思います。

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