デザイナー3人で起業、感じていた共通の課題
――皆さんのキャリアも含め、自己紹介をお願いします。
岩瀬 多摩美術大学グラフィックデザイン学科を卒業後、ITベンチャーに入社してグラフィックデザイナーとしてキャリアを始めました。その後、アートディレクターとして広告代理店で外資系企業の案件に関わる中でブランディングのおもしろさを感じ、事業会社に戻りブランドガイド制作や、広告クリエイティブの統一などブランドに携わりました。その後もいくつかの事業会社で勤務し、そのなかの1社であるネクストビートで、当時デザインマネージャーをつとめていた吉野と出会いました。その後ふたりで同じスタートアップにジョインするなどの経験をしたのち、一緒に起業することを決意。2022年1月にVECTORを立ち上げ、2ヵ月後の3月に柴田がジョインしました。
吉野 僕はUI/UXデザイナーとしてキャリアを積んできました。学生の頃、一般の大学に通いつつ、ずっとやりたいと思っていたデザインを勉強するべく、大学と並行してデザインの専門学校にも通っていました。そのころにアルバイトで関わっていた制作会社が、デザイナーとしてのキャリアの始まりです。卒業後は検索エンジンを手掛ける企業に入社し、ECサイトを運営しているアパレル企業に転職。ブランドサイトやIRサイトを手掛け、そこでデザインの実務だけでなくマネジメントも行うようになりました。その後もスタートアップをいくつか経て、CDOや新規事業の立ち上げ、事業のバイアウトなどを経験し、VECTORを創業しました。
柴田 最初は制作会社に入社し、10年ほど広告のデザインに関わっていました。その後、私はインハウスとしての働きかたに魅力を感じたため、一人目のデザイナーとして株式会社ツクルバに入社。ツクルバではクリエイティブ室 室長としてマネジメントも経験し、自社事業のデザインに携わってきました。
――起業した背景について、もう少し詳しくお聞かせください。
岩瀬 僕と吉野は多くの企業を経験してきましたが、その中で企業におけるデザイナーの価値があまり高くないのではと感じていました。もっとデザイナーがバリューを発揮できるような世の中や組織をつくっていきたい。デザイナーである僕らが自分たちのバリューを正しく発信し、価値を届けたいというのが起業のいちばんの動機です。
それと、組織にいるとどうしても人事的な評価軸の中で動いていかなければなりません。その枠にとどまらず、自由に想いを実現したいという気持ちもありました。
柴田 当たり前ではあるのですが、事業会社に所属していると、企業の成長フェーズによって携われることとそうでないことがあります。グロースの段階であれば、売上をあげることが重視されることが多いため、クリエイティブの価値は相対的に低く見られてしまうこともよくありました。会社の舵取りに左右され、なかなかクリエイティビティが発揮できないというのが、インハウスのデザイナーとして企業の中で感じていた限界でした。それを突破したいと感じていたことも、起業につながっています。
岩瀬 3人全員がデザイナーとして働いてきたなかで、世の中に対して感じる課題があり、アウトプットをつくりだすスキルもある。そうであれば誰かのアイディアに乗るのではなく、自分たちのやりたいことを存分にやれる環境をつくりたいというモチベーションはありました。
吉野 そうですね。僕はその動機が占める割合が大きくて。これまで新規事業の立ち上げからのバイアウトなども経験しているため、改めて自分の会社でいちから立ち上げ、好きなことに挑戦してみたいという気持ちが強かったですね。