はじめまして、株式会社SmartHRのプログレッシブデザイングループ マネージャー/アクセシビリティスペシャリストの桝田(masuP9)です。現在はプログレで、プロダクトのアクセシビリティ向上と多言語化に取り組んでいます。
今回の連載ではなかでも「アクセシビリティ」に焦点を当て、SmartHRが力を入れている理由や今までの取り組みなどを紹介します。皆さんがアクセシビリティ向上に取り組む際の一助になれば幸いです。
コーポレートミッションの変更により、取り組む意義がさらに明確に
実は以前連載していたCreatorZineの記事「社会の非合理を生み出さないために――誰もが使えるUIをデザインするアクセシビリティとは」で、SmartHRがアクセシビリティに取り組む理由をお話していました。
この記事でお伝えしたその理由を、次の2点にまとめると次のとおりです。
- 当時「社会の非合理をハックする」というコーポレートミッションがあった。私たちの製品を使えない人がいること自体が社会の非合理になってしまい、コーポレートミッションを達成できなくなってしまうため、アクセシビリティの向上を目指した。
- SmartHRで年末調整ができない従業員がいる場合、その人向けに別のプロセスを構築する必要があり、SmartHRを導入する目的も達成できなくなってしまう。このようなケースを防ぎ、「働くすべての人を支える」ためにアクセシビリティの向上を目指した。
これらの理由は今でも大きくは変わっていません。ただこの記事を執筆した2年前と比べると、より取り組む意義が明確になったり、詳細に言語化できたりした部分もあります。
まず大きなポイントとして、当社のコーポレートミッションが「社会の非合理をハックする」から「労働にまつわる社会課題をなくし、誰もがその人らしく働ける社会をつくる。」に変更されました。
コーポレートミッションの変更を受け、「誰もがその人らしく働ける社会を作る」の「誰もが」の部分を実現することが、アクセシビリティに取り組む理由となりました。これまでは「自分たちが非合理を生み出さないようにする」と少し消極的だったところから、コーポレートミッションを達成するためにアクセシビリティが必要だ、と認識しやすくなりました。
またこの2年間で、高いアクセシビリティを必要としている従業員を雇用している企業に導入していただけるケースも出てきました。それにより私たちもユーザーの利用状況を詳しく知ることができ、人事労務担当者、従業員それぞれの目線からも、アクセシビリティが低いシステムに起因する問題がたくさんあることを知りました。以下に例を示します。
人事労務担当者・企業の視点
- システムを利用できない従業員向けに別のワークフローを作る必要が生じる
- 特定の従業員向けの特別な対応が業務を圧迫し、重要度の高い業務に着手できない
- 特定の従業員との間に助ける人-助けてもらう人という関係性が固定化し、組織に無用な上下関係が生まれてしまう
システムが使えない従業員の視点
- 全社員が一斉に年末調整を行う時に誰かに特別な対応をしてもらわなくてはならない
- 入社手続きを誰かに手伝ってもらいながら進めなくてはならない
- 毎月会社から送られてくる従業員サーベイに回答できず、自分の意見を伝えることが難しい
- フィードバックされた自分の評価結果を自由に見返すことができない
- 給与明細などのプライベートな情報を家族や担当者に見てもらわなくてはならない
- 業務の中で組織図や社員名簿を確認したくても、自力では閲覧できない
出典:SmartHR ACCESSIBILITY「“誰も”が利用できない人事システムを採用すると何が起こる?」
このような例を引き起こさず、さらに多くのお客さまに導入していただくために、SmartHRはアクセシビリティ向上の取り組みを続けています。