ライフハック系動画からスタートしたTikTok運用
三井住友カードではTikTok、Instagram、X、Facebookなど複数のSNSで公式アカウントを展開。それぞれの特性に合わせた施策を実施している。拡散性の強いXでは、新商品や新サービスのリリース時期に合わせたキャンペーンなど、認知拡大施策が実施されてきた。
TikTokアカウントの運用を開始したのは2023年1月。同社は、年齢が若いときからクレジットカードを持ってもらうことができれば、その先も長く利用してもらえる可能性が上がることなどから若年層が重要なターゲットであるにも関わらず、これまでSNS上での十分な接点を持てていないという課題があった。TikTokの運用を開始したのは、そういった若い世代にアプローチするためだ。もちろん投稿時にはTikTokだからこその工夫も欠かせない。
「TikTokでは最初からサービスの訴求のみをしていると動画を飛ばされてしまう。そこでライフハック系の動画をアップし、少しずつサービスに関する情報を入れていくことにしました」(神谷さん)
これについて同社のSNS戦略や企画提案をサポートしていたSNSマーケティングを行うFinTの木戸さんも「最初から企業名を前面に出すよりも、シンプルに視聴者に役立つ情報を発信したり、楽しんでもらえるコンテンツ制作を行ったりするほうが良いのではないかとお伝えしました」と振り返った。
「話題化」と「サービス訴求」双方の実現のためにショートドラマに挑戦
このようにTikTokをはじめいくつかの媒体を活用していた三井住友カードであるが、各プラットフォームで順調に運用ができていた反面、SNSらしい“話題化”を狙いたいとの考えもあった。「ユーザーとのタッチポイントを増やしていく」というゴールを実現するためには、既存のフォロワー以外にも効果的にアプローチする必要があるからだ。同社ではそのための取り組みを「殻破り施策」と銘打ち策を練っていた際、FinTから提案があったのが今回のショートドラマである。
「ちょうど私たちとしても、中国で流行しているショートドラマが日本にも広まってきており、若年層を中心に話題になっていることを実感し始めたタイミングでした。昨今は単純なサービスや体験をただアピールするよりも、その企業の『ストーリー』が重視される傾向にあるため、ショートドラマならば訴求とストーリー性の両方を一度に伝えることができるのではないかと提案しました」(木戸さん)
その提案を受けたときのことを、公式Instagramの運用、会員向けコミュニケーション施策の企画・運用を担う高橋さんは次のように振り返る。今回のショートドラマ施策で三井住友カードが訴求したのは「スマホのタッチ決済」だ。
「SNSライクな部分とサービス訴求のバランスがとても良い企画だと感じ、ぜひ取り組んでみたいと思いました。昨今のSNSでもショートドラマはトレンドになっていますし、情緒面からアプローチすることができれば、商品やサービスの訴求も違和感なく受け取ってもらいやすいですからね」(高橋さん)