クリエイターの個性を最大化するために PARTYのリーガルストラテジストが描く“越境するための法務”とは

クリエイターの個性を最大化するために PARTYのリーガルストラテジストが描く“越境するための法務”とは
2020/01/23 08:00

 最新のテクノロジーやストーリーテリングを融合させ、領域横断的なモノづくりを行うクリエイティブ集団「PARTY」。そこで法務を担っているのが弁護士の山辺哲識さんだ。企業に法務として入り込むことで生まれた変化や、入念にチェックするべき契約書の特徴などについて話を聞いた。クリエイティブ企業のリーガルストラテジストとして、山辺さんは何を目指しているのだろうか。

従来の法務にとどまらない「リーガルストラテジスト」の役割

――まず、弁護士になろうと思ったきっかけを教えてください。

演劇や映画といった、とくに表現芸術の世界がもともと好きだったので、その世界でやっていくことも考えたのですが、自分の覚悟や実力を総合してそれは難しいと思ったときに、弁護士としてクリエイティブな世界をサポートする別の方法として、弁護士の道を考えました。昔、ディベートの大会に出るなど、自分でも適性があるかもしれないとは感じていた部分もあったので、ロースクールに進み、パフォーミングアーツやインタラクティブメディアの世界をサポートする弁護士を目指していました。

弁護士になった当時は、週末や業務時間後に、リアル脱出ゲームの開発をしている「株式会社SCRAP」という会社にスタッフとしてジョインし、そこでは法律面のサポートではなく、イベントの司会や会場の誘導といったスタッフ業を数年行っていました。当時は社員が5人くらいだったのですが、それから会社が大きくなるにしたがい法律面もサポートするようになって。本業に戻ってきたような形です。

そのときはSCRAPの運営スタッフと、渉外の大きな法律事務所という二足のわらじでしたが、2015年にアメリカへ留学したことを機に、法律事務所を一回離れ、2016年から2017年頃に、SCRAPのアメリカ法人に社員として加わることになったんです。その間はプロデューサーとして体験型ゲームを作るなど、さまざまな経験をさせてもらいました。

そのあと日本に戻って2017年9月に独立することを決めたのですが、アメリカで得たノウハウを生かしながら仕事がしたかったので、SCRAPの法務も同時にスタートしました。そのときは、自身の法律事務所とSCRAPの法務と、リソースは半分くらいずつ使っていました。

――PARTYの社員として法務の役割を担うようになり、なにか変化はありましたか?

PARTYは2014年から私のクライアントで、主にメールベースではありますが社員になる以前から法律面のサポートをしていました。当時、PARTYがフィンテックの領域でもあるマイクロトレードサービス「VALU」を立ち上げたところだったのですが、いろいろな規制が適用される分野なので、そういった面のサポートをしてくれる人がほしいとオファーを受け、社員として本格的にジョインすることになりました。

PARTYないしVALUの社員として活動ができることはとても大きかったですね。代理人として規制当局と折衝するのと、社員として折衝するのでは相手が受ける印象が全然違うんです。また当時PARTYには法務機能がなかったので、それ自体を立ち上げたり、コアな部分も求められていたと思います。

PARTY Legal Strategist/アトリエ法律事務所 弁護士 山辺哲識さん
PARTY Legal Strategist/アトリエ法律事務所 弁護士 山辺哲識さん

実際に入ってみて、メールベースで相談を受けていたときに比べ、相談のタイミングが圧倒的に早くなりました。以前は相談となると、すでに先方から契約書を受け取ったあとの段階で確認の依頼がくるケースが多かったのですが、それってタイミングとしてはリリース間近であることがほとんどなんです。ですがいまは、プロジェクトメンバーのすぐ隣の席にいる距離感で仕事をしているので、「明日プレゼンなんですけど、企画がAとBとCの3つ案があって…。」という企画段階での相談も増えましたね。

あとは、定例会議や社内のSlackチャンネルにも入っているので、直接相談は入っていなくても、案件の動きが見えるようになる。すると気になったことがあった時にこちらから声をかけることもできますし、それぞれのメンバーの特性や取り組みかたも見えてきます。ほかの案件でも、その人の強みや、逆に弱みをも意識したアドバイスができるようになったのは、大きな違いだと思います。

――山辺さんの肩書は「リーガルストラテジスト」となっていますが、具体的にどんなことをされるんですか?

これは代表の伊藤と相談して作った肩書です。たとえば契約書をチェックする、法令を遵守する、知財を守るといった、本来の法務という職種から連想される「守る」部分ももちろんやっているのですが、PARTYは、なにか新しいものをアイディアとして着想することに強みをもっている会社です。そのため、そういった発想をより魅力的なものにするために私から提案できることがあれば、戦略まで入り込み、能動的に発信することもあります。

――戦略まで入り込むというのは、どういうイメージでしょうか。

具体名は出せないのですが例をあげると、A案B案C案があったときに、法令や官公庁のガイドラインを調べたところ、A案は法律の面から見てOK、B案は危ない、C案はNGということがわかった場合。この中でもっともつまらない企画はA案なんですよね。法律的に問題ないことがはっきりわかるような案は、企画がとがっていないことが多い。むしろB案とC案の中に宝物が隠れているわけです。だから相談を受けたときも、OKになった案はむしろ企画としては切り捨てていくようなイメージ。一方、とがりすぎてNGになってしまったC案をどのように変更したら、法的に問題のないラインに収めることができるかというのを、持ち帰って検討する時間はないのでその場で議論します。そういった判断のサポートも行っています。

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