こんにちは、SUPER STUDIOの渕上です。SUPER STUDIOのデザイン組織であるカスタマーエクスペリエンス室の室長として、顧客体験価値の最大化に向けたデザイン業務全般と組織のマネジメントを担当しています。
「デザイン組織」とひとくちに言っても、会社によってその担当領域や役割はさまざまです。私がこれまで経験してきたなかには、内部受託のような形でデザイン組織が他部署と連携し、業務に携わるケースが多くありました。実際、他部署からの依頼どおりに制作を進めるという事業会社のデザイン組織も少なくないのではないでしょうか。しかし、本質的な事業、ひいては会社全体の成長のためには、デザインの概念を理解している組織がより積極的に事業・会社に関わり、デザインの観点から課題解決に務めることが不可欠だと考えています。
このような考えのもとSUPER STUDIOのデザイン組織では、主要事業である「ecforce」のSaaS事業と自社D2C事業での業務のほか、バックオフィスが担うコーポレートブランディングや採用ブランディングにも積極的に介入し、横断的に携わっています。
本連載では、私たちデザイン組織が、会社・事業に対してどのような狙いや役割で関わっているのか。とくに主要事業ではないバックオフィス領域のコーポレートブランディングや採用ブランディングへの関わりかたや、成果の出しかたなどについて、具体的な施策を交えながら紹介します。
初回となる今回は、SUPER STUDIOのデザイン組織として、裁量権のある組織組成をした狙い、コーポレートブランディング/採用ブランディングへの領域拡張に焦点を当ててお伝えします。
SUPER STUDIOの事業と、その成長を支えるデザイン組織
まず、SUPER STUDIOの事業について簡単に紹介します。SUPER STUDIOでは、EC領域のSaaS事業である統合コマースプラットフォーム「ecforce」の開発・提供と、自社D2C事業としてフードD2Cブランドの「(ふつうの)ショップ」、ストリートアパレルのD2Cブランド「MEQRI」の運営を行っています。
このふたつの事業は独立して存在しているわけではありません。ecforceにまつわる新しいプロダクトや機能アップデートは、まず自社D2Cブランドで効果を検証。自社D2C事業を運営するなかで得たシステムの課題は、ecforceの機能や新プロダクトの開発にフィードバックすることで、ユーザーファーストなプロダクトの提供を実現しています。また、自社D2Cブランドの運営で培ったノウハウや成功事例を顧客へ還元するコンサルティングサービスなども提供しています。
2017年にecforceの提供を開始して以来、EC/D2Cの事業運営と売上向上を支えるさまざまなプロダクトを展開してきました。直近では、2023年3月にEC特化のMAツール「ecforce ma」を、2024年4月にはデータ活用における可視化・分析を行うダッシュボードツール「ecforce bi」の提供を開始しました。
このような事業を展開するなか、私たちデザイン組織は19名のメンバーで構成されています(2024年8月時点/業務委託含む)。体制としては、ecforceを中心としたプロダクト領域を担当する「プロダクトデザインユニット」と、自社D2Cブランドや両事業のマーケティング領域を担当する「ブランドデザインユニット」のふたつに大別されます。
プロダクトデザインユニットは、「UX・UIチーム」と「フロントエンド・プロダクトチーム」で構成されています。おもな業務内容は、ecforceをはじめとした関連プロダクト全般のUIデザインやUXリサーチです。各プロダクトの管理画面におけるUI/UXを改善すべく、ペルソナ設計やUIに付随するフロントエンド業務、ecforceのお客さまに対するヒアリングも行っています。ヒアリングでは、プロダクトのアクティブ率など状況に応じてセグメントをし、それぞれの設問項目を設計しながら、プロダクトの課題を抽出しています。こうした取り組みを通じて、ストレスフリーでシームレスな顧客体験を提供しているのです。
ブランドデザインユニットでは、デジタルチーム、ビジュアル・モーションチーム、フロントエンド・ブランドチームの3つに分かれ、「コミュニケーションデザイン」の領域を担当しています。各種ウェブサイト構築やLPの制作、自社D2Cブランドの映像制作、店舗・ポップアップ・パッケージなどのブランディングやマーケティングといった、顧客とコミュニケーションをとるうえで欠かせないデザインやエンジニアリング業務を行っています。
また、必要に応じてデータ分析を行うこともあります。たとえばブランドサイトなどのリニューアルを行う場合には、他部署と連携しながらサイトのPV数やCV数、回遊率などのデータを必ず確認するようにしています。データ分析を行うことで、サイト上のどこに課題があり、どのような解決策が必要なのかを明確にし、他部署と認識の齟齬なくデザイン制作を進めることができます。