いきなり高度なAIツールは不要? クリエイティブ業務にAIを組み込むコツともたらされる変化とは

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2025/04/08 11:00

すべてのクリエイターに求められる「監督」するスキル

 そもそもなぜ、ビジネスにおいてAIの活用が求められているのだろう。その理由を河野氏は「優秀な人手は足りなくなり続けるから」だと説明する。

「これから先、採用はさらに難しくなっていくと思います。採用してもすぐに辞めてしまったり、ミスマッチが発生したりといったことも増えるでしょう。現場の負荷が大きくなり、従業員も働き続けられなくなるかもしれません。そうすると、ユーザーを考えた中長期視点でビジネスを作ることが難しくなってしまいます」

 本来は、顧客の満足や価値を追求し、事業/プロダクトの戦略をつくっていくのがビジネスである。だからこそ、「無理に人を増やすのではなく、標準化できる作業はAIに代替して、顧客に届ける価値に集中するべきだ」と河野氏は指摘した。

 続いて言及されたのは、これからのAIとクリエイティブの未来について。

「ChatGPTのロードマップとして、GPT 5.0では『推論を得意とするoシリーズ』と『マルチモーダルかつシンプルな対話体験を提供するGPT-4oの系統』がひとつのシステムとして統合して提供されると言われています。そこに画像や動画生成のAIも統合されるのではないかと予想されています」

 画像や動画生成のAI技術は進化を続けており、「正直1年前は使いものにならなかったが、今はCMや映画といった実際のクリエイティブに活用できるレベルに到達している」と言う。今後はさらにその精度も向上していき、「制作プロダクションなどで本格的に利用されるのにともなって、クリエイティブへのAI活用の規制と倫理の整備も強化されていくはず」と河野氏は自身の見解を示した。

 想像できないスピードで生成AIが発展していく今、これからすべてのクリエイターに求められる能力とは何か――。河野氏は「監督」「クリエイティブディレクター」「プロダクトマネージャー」といったスキルだと語る。

「今までは自ら作り出すことが重要でしたが、これからはAIが作ったものに対し『こうしたほうがいい』とより良いアイディアを指示することが求められる。それができる人が、多くの業務を回したり、高いアウトプットを出したりできるのではないでしょうか」

 これを企業へのアドバイスとして言い換えるならば、「業務をAIネイティブ化する枠組みが必要になる」と言える。そこで河野氏が提唱したのが「Hyper Enable Ops」という考えかただ。従業員の数が多くなると管理コストは上がる。そこで、数人が100人規模の会社と同じパフォーマンスを出せるような組織をAIの支援で実現しようと考えるのが、Hyper Enable Opsだ。さらに、その最先端な生成AI技術によってHyper Enable Opsに向かうと言われているのが、クリエイティブ関連の会社なのである。

「最終的には、スケールフリーな組織をつくっていければと思っています。あらゆる業務に生成AIを活用し、数人の組織でも数百人の業務ができる状態を目指すのが理想です。そしてそれが結果的に、高い利益率と、より優れたクオリティのアウトプットを生み出すことができるようにしていきたいです。そしてこの組織の形が実現できれば、これから人口減に至る日本にとって大きなブレイクスルーになるのではないかと期待しています」

 河野氏は、自身が経営するMMOL Holdingsでこういった組織づくりを支援する枠組みを提供していることにも触れ、セッションを締めくくった。

「生成AIによって効率化して終わりではなく、新しい体験やビジネスのありかたをつくっていく。それを組織づくりとあわせて提供しているのが、われわれMMOL Holdingsです。ご興味を持っていただけたら、ぜひお気軽にご相談ください」