ChatGPT Atlasが描く、「調べる」から「導かれる」ウェブ体験

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AIブラウザ時代のキーワード──「導かれるUX」

 これまでのウェブ体験は、「探すUX」でした。自分でキーワードを考え、リンクを選び、比較し、判断する。それは人間の能動性にもとづく、美しい行為でもあります。しかしAtlasのようなAIブラウザが登場したことで、UXの軸は変わりつつあります。「探す」から「導かれる」へ。ユーザーは「質問」するだけでなく、「目的」を共有し、AIがその先の行動を導いてくれるのです。

 UIUXの設計においても、ボタンやメニューではなく、「文脈そのもの」がインターフェースになっていく。つまり、コンテキストドリブンなUXが、本格的に現実のものになりつつあるのです。

 それでも、「納得」をデザインするのは人間です。AIは正解を出しますが、人は「共感できる理由」を求める。そこにこそ、UIUXデザインの価値が残り続けます。これからデザイナーは、インターフェースを作る存在から、「インテリジェンスの翻訳者」へと進化していくでしょう。 AIの思考を人に寄り添う言葉に変え、安心できる導線を設計する。Atlasが示す未来は、そんな共存型デザインの始まりです。

まとめ:地図を描くのは、まだ人間だ

 ChatGPT Atlasは、ブラウザというもっとも古いインターネットの器を再発明しました。これまで私たちは「情報を探す」ためにブラウザを使ってきましたが、これからは「理解を深める」ために使うようになるでしょう。

 ただ変わることがないのは、「最終的に目的地を決めるのは人間である」ということ。AIが地図を描いても、それを読み解くのは人間の想像力。デザイナーの仕事は、AIという知性の海で、人が迷わず心地よく旅できるようコンパスを設計することです。

 そして、その地図を見つめる目線をデザインするのも、私たち人間なのです。

おわりに

 この4年間、「UIUXとは何か」を追い続けてきました。技術は目まぐるしく進化し、AIはときに私たちの仕事を脅かすように見えることもあります。でも結局のところ、AIは「理解を助ける存在」であり、「感じる力」を持つのは人間だけです。

 デザインとは、人とテクノロジーのあいだにある、「あたたかい余白」をつくる行為。その余白がある限り、AIがどんなに賢くなっても、私たちの仕事はなくならないでしょう。

 今回で、私が連載させていただいた「UIUXの話をしよう」は最終回となります。4年間という長きにわたり、記事を読んでくださったすべての皆さまに心より感謝申し上げます。今までの記事が、みなさん自身や仕事、チーム、そして未来のデザインを考える「次の一歩」につながれば、これほど嬉しいことはありません。

 これからも、変わり続ける時代の中で、人とテクノロジーの新しい関係を、デザインを通して一緒に探していきましょう。

 またどこかでお会いしましょう。ありがとうございました。