Portals活用のメリットとデメリット
新技術であるPortalsを活用するうえではとくに、メリット・デメリットの両方が存在することは想像に難くない。まず良い点について関氏は、SPA(シングルページアプリケーション)化が難しい場合でも、MPA(マルチページアプリケーション)のまま画面遷移をシームレスにできることを挙げた。
「Portalsの優れた点は、既存のMPAアーキテクチャ上でも、画面遷移をシームレスにし、ユーザー体験を向上させることができることです。画面遷移をシームレスにするという意味では、SPA化するという選択肢ももちろんあると思います。しかし、開発コストの問題や、規模が大きいサービスで領域ごとに開発組織がわかれている場合などには、SPA化が難しいこともあるでしょう。ヤフーはまさに規模が大きいサービスを多く取り扱っているため、開発組織もわかれていることが多い。MPAのままシームレスな画面遷移を実現できるPortalsは、そういった点においてもとても有効だと感じています」
また、PortalsがシンプルなAPIであるため、エンジニアだけでなくデザイナーでも扱いやすいことも大きな特徴だという。
「たとえば、今回Yahoo!ニュースのPortalsの実装をメインで行ったのはデザイナーでした。デザイナーが理想とするユーザー体験、デザインを、そのままウェブアプリケーションに落とし込むことが可能になるので、ユーザー体験を効率的に向上することができると感じました」(関氏)
一方、先進的であるがゆえに、まだ対応ブラウザが限定的なことには注意が必要だ。2020年2月時点では、利用するにはGoogle ChromeでPortalsのフラグを有効にしておく必要がある。「実際のサービスに導入するためには、何らかのフォールバックを用意しておく必要があります」と関氏は指摘する。
また、インプレッションの計測においては、方法によっては<portal>要素でページを取得した時点でインプレッションが計測されてしまう場合があるとのこと。こういった点には十分留意しなければならないだろう。
だがこうした注意点こそあれ、Portalsの活用が今後の標準になっていくだろうという期待が薄れることはない。萩野氏もPortalsを活用することで「デザイナーとして表現の幅が広がり楽しい」と感想を語る。
「アプリのような体験をデザイナーでも作りやすくなったので、とても取り組む甲斐がありますね。そのうえで良いものを作るために必要なのは、プロトタイピングなどを『ともにつくる』という意識。デザイナーだけでは難しくエンジニアの力を借りるときもありますので、取り組みかたはとても重要です」
最後に関氏はエンジニアの立場からPortalsの魅力について以下のように語り、プレゼンテーションを締めくくった。
「エンジニアの立場からユーザーのストレスを軽減できるのが魅力だと思います。商品ページから検索ページへの遷移に時間がかかるというのは長年課題だったので、そのストレスを解消するためのひとつの方法なるはずです。もちろんほかにも手段はあるかと思いますが、そのひとつを見つけられたことはとても大きいのではないでしょうか」