適したツールは?モブプロで一緒にUIを実装するには? デザイナーがスクラムに加わるときのTipsを紹介

適したツールは?モブプロで一緒にUIを実装するには? デザイナーがスクラムに加わるときのTipsを紹介
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

 アジャイルソフトウェア開発手法のひとつ「スクラム開発」。最近、開発の現場で取り入れられることも多くなってきました。本連載では、エンジニアの立場ではなく、“デザイナー”がスクラム開発に関わるときのコツについて、サイボウズのUX/UIデザイナー、樋田勇也(といだゆうや)さんに解説していただきます。最終回となる今回はデザインデータの作りかたや使うツール、チーム内でのコミュニケーションについてです。

 こんにちは。サイボウズの樋田です。前回はスクラムに参加していく3つのコツについてお話しました。

 連載最後となる今回は、デザインデータの作りかたや使うツール、チームとのコミュニケーションなどのTipsを紹介します。

作り込まないデザインってどういうこと?

 前回の記事では「デザインは作り込まず価値を届けることに集中しよう」とお伝えしました。では、作り込まずに価値を届けるデザインとは具体的にどんなものでしょうか。

 ありがちな失敗例としては、ついついデザインツールの機能を使いすぎてしまう、というものがあると思います。

 とくに最近のSketchやXD、Figmaといったデザインツールは再利用可能なコンポーネントを作る機能が充実しています。こうした機能を活用したデザインデータは、メンテナンスのコストも低く、優れたデザインテンプレートとなります。

 ただ、プロトタイプにこうした機能をたくさん盛り込んでしまうと、デザインに大きな変更を加えようとしても「まずはコンポーネントのマスターを修正してからでないと…」となってしまい、時間がかかってしまうことも少なくありません。

 また、レイヤーの整理などもデザインデータを綺麗に保つには重要なのですが、これもはじめのうちからやりすぎてしまうと、フィードバックのたびに整理のやり直しが必要になってしまい、デザインのやり直しを阻害する原因になります。

 そのため、プロトタイプの段階ではきれいなデザインデータ作ることよりも、いち早くバックログを形にして、デザイナー以外の人がデザインを通してバックログを検証できるようにすることを優先します。

 もし、こうしたプロトタイプに対して1pxのずれやデータのきれいさを指摘する人がいたら、どういう目的でそれが必要なのかをぜひ話しあってみてください。目的をすりあわせてないまま型通りの成果物に囚われてしまうと、アジャイルなプロセスを妨げてしまいます。

 再利用可能なコンポーネントとして作りこみ、レイヤーを整理整頓するのは最終的に実装が終わったあとに行います。

 kintoneのデザインチームでは、kintoneの画面と部品を網羅したFigmaのアセットを用意しています。このデータは本体の更新に合わせて常にアップデートとメンテナンスを続けています。こうした準備をしておくことで、デザイン作業をショートカットし、本質的なデザインの検討に時間を割くことができるようになります。

スクラムに適したデザインツールって?

 こうしたデザインを実現するためにはデザインツールの選択も重要です。kintone開発チームではこれまで、より軽量で早く、そしてオープンにデザインをシェアできる方向にPhotoshop →Sketch→Figmaへとデザインツールを変えてきました。

 PhotoshopからSketchに変えた時は、ちょうどスクラムが始まった頃で、デザイナーがプロダクトオーナーやエンジニアと議論をしながらその場でデザインを編集していくスタイルが確立された時期でした。そのため、多機能だけど重たいPhotoshopよりも、シンプルで軽量なSketchの方がその場でサッと編集するには向いていました。

 一方で当時はデザイナーがまだひとりしかおらず、またデザイナーと開発チームがそれほど一体になっていなかったことあり、データのオープンさはそれほど気にしていませんでした(当時はまだFigmaがなかったこともありますが)。

 その後デザイナーの人数が増え、モブプロをはじめ、デザインのプロセスに開発チームの人も関わるようになってくると、デザインデータに複数人がアクセスできる必要が出てきました。そのため、専用のアプリが必要なSketchではなく、WebベースでURLをシェアすればすぐにチームメンバーがデザインデータにアクセスができるFigmaに乗り換えることを決めました。

 ふりかえると、より軽量によりオープンな方向へツールを切り替えてきたことがわかります。その場ですぐにデザインを編集できる軽量さと、周囲へデザインをオープンにしていくための共有しやすさを備えていることが、スクラムというアジャイルなプロセスに適したデザインツールと言えそうです。

※この続きは、会員の方のみお読みいただけます(登録無料)。