ハニカムラボと會澤高圧コンクリートは、Trimble XR10(HoloLens 2搭載のヘルメット一体型デバイス。以下、「XR10」)を活用した遠隔臨場を支援するシステムを共同開発し、札幌市発注の公共事業において、同市職員立ち合いのもと、同システムでの遠隔臨場を実施したことを発表した。
複合現実(Mixed Reality:MR)とは、マイクロソフトの「HoloLens」に代表されるウェアラブルな専用ディスプレーを用いることにより、仮想的な物体の実物が目の前に存在するかのように映し出すテクノロジー。生産や施工のリアル空間に、デジタル化した書類や図面、映像などを浮かび上がらせることができるため、生産や施工の現場を遠隔管理し、業務効率を大幅に改善することなどが期待されている。
會澤高圧は、グループの一級建築士事務所であるADAACを中心に建築土木分野のDXを推進しており、MRの新たな活用方法の開発を目指して約1年前からハニカムラボとのコラボレーションをスタートさせた。
ハニカムラボは、3D技術やMR技術を活用したシステム開発を得意とし、2017年には米マイクロソフトがワールドワイドで展開するHoloLensおよびMRの公式開発パートナーであるMRPPの認定を受けている。
同システムによる遠隔臨場の概要
遠隔臨場とは、工事現場や生産現場においてモバイル端末などによる映像と音声の双方向通信を使用し、公共事業で通常はリアルに行われる「段階確認」「材料確認」「立会」を遠隔で行うもの。
遠隔臨場用に開発した同システムは、発注者が役所内で使うPC、計測者が現場で使用するヘルメット一体型のMRデバイス「XR10」、現場指揮者が現場作業の全体を進捗管理して役所に中継するために使うiPadの3つで構成されている。
発注者は、公共事業を発注した場合、コンクリート部材などの製造・施工現場に定期的に足を運び、契約通りに作業がなされているか、確認や立会を行う。同システムを使えば、役所にいながら、iPadの映像を通じて現場の様子を把握できるほか、XR10が映し出す計測者の手元の状況も詳細に確認できる。検査項目のチェックリストや図面などを画面上に配置し、関係者全員で共有しながら作業を進められるのが最大の利点とのこと。また、検査工場が複数にまたがっている場合でも画面の切り替えで対応できるなど、従前に比べて大幅な作業の効率化や時間の短縮を図ることができる。
現場にいる計測者は、ヘルメット一体型のMRデバイス「XR10」を装着して計測を行います。MR技術により計測者の眼前の空間に現在の計測箇所の図面や計測項目が表示され、計測者はそれを確認しながら計測を進めることができる。また、計測の様子はXR10のカメラを通してリアルタイムで撮影され、その映像がPCブラウザの画面に送信される。XR10はハンズフリーで操作が可能なため、計測者は両手を自由に使え、計測と撮影に集中することができる。
一方、現場指揮者は、iPadで検査項目を選択しながら検査の全体を進行させる。役所内にいる発注者とコミュニケーションを取りながら、現場指揮者は手元で入力した計測結果を即座に役所と共有できるため、作業効率が高く、ペーパーレスな検査を進めることができる。またiPadのカメラでは、XR10を使って計測を進める現場計測者の映像をリアルタイムに送信し続けるため、計測データの確実性を担保することにつながるという。