米国時間の6月21日、アメリカ・サンフランシスコのMoscone Centerにて、ブラウザ上で共同編集できるデザインプラットフォーム「Figma」を提供するFigma, Inc.が主催するグローバル年次カンファレンス「Config 2023」が開幕した。
Figmaの年次カンファレンス「Config」はデザイナーやエンジニアなどのグローバル・コ
ミュニティが一堂に会し、互いにつながり学び合う場であり、Figma の新機能や製品の多
くが発表される場でもある。開催は今回で5回目を数え、世界各国から約8,000人が集まった。
カンファレンス1日目のオープニングセッション冒頭には、Figmaの共同創業者/CEOのDylan Field氏が登場。「昨年はとくに大きくプロダクトが変わった1年でした。またプロダクトだけではなく、コミュニティもとても成長しました」と2022年を振り返った。
また、AIによるFigmaの未来を見据え、「Genius」「Magician」などのAI関連ツールを開発・運営するDiagramの買収を発表。Dylan氏は、「DiagramチームとAIのケイパビリティを広げられることを楽しみにしています」とコメントした。
その後、新たな6つのアップデートについてデモを交えながら紹介。開発者のためのFigmaの新しいスペース「Dev mode」やフォントピッカーのアップグレードなどが発表されると、会場からは大きな歓声があがった。
#Config2023 でデザインと開発を橋渡しする機能が登場しました。
— Figma Japan (@FigmaJapan) June 21, 2023
開発者のためのスペース、開発モード
バリアブル
高度なプロトタイピング
オートレイアウトのアップデート
フォントピッカー
ファイルブラウザーのリデザイン
そしてAIによるFigmaの未来を見据え、@Diagram
の買収を発表しました。 pic.twitter.com/haKSZVxJZm
編集部ではこのアップデートを受け、FigmaでCPOをつとめるYuhki Yamashitaさんに個別取材を実施。今回注目すべきアップデートや日本市場の印象などについて話を聞いた。
――今回発表されたアップデートで、とくにパワフルだと感じているものはありますか?
Variables(変数)のアップデートです。デザイナーはspacingなど数値を指定しなければいけない場面が多くありますが、それらを一ヵ所でまとめてコントロールできるようになります。エンジニアも変数を使っているため、同じ言葉でとらえることが可能です。
また、ECサイトの買い物カゴにどんどんと商品を追加していくなど、変数を使って合計を計算することも可能になりました。より現実的なプロトタイプができたり、開発する前にアイディアをテストすることができるようになった点も、とても強力なアップデートだと感じています。
アメリカではエンジニアの数が少なくなっている会社も多いですが、アイディアを早い段階でテストすることによって開発時点で自信をもって着手することができるため、より効率的なプロセスになるでしょう。
先ほどのデモで紹介がありましたが、文字列の変数を使えば、複数の言語のコンテンツを取り込んだり入れ替えたりと、ワンクリックでローカライゼーションをすることが可能です。
たとえば通訳のプロセスでは、画面で使用する言葉をエクセルに入力し、そのシートを通訳に渡すとコンテキストが伝わらないこともよくありますが、文字列の変数を使えばFigmaの画面上でリアルタイムに確認することができます。この機能にAIは活用されていませんが、プラグインをとおして通訳のAIを組み込むことも可能です。
――日本の市場にはどのような印象をもっていますか?
現在の日本のマーケットをみると、私がFigmaに入社した2019年ごろのアメリカを思い出します。デザインの重要性が伝わり始めておりその傾向自体は良いものの、「まだ早い」という印象です。
アメリカの大学にはプロダクトデザインの専攻がありますが日本にはほとんどなかったり、プロダクトデザインに関わる人は、開発やグラフィックデザインの領域から転向してきた人も多い。数年たてば、日本の大学でもそういった専攻ができるのではないかと期待しています。
デザインに投資するのはシリコンバレーでは当たり前になっていますし、AppleやAirbnbのように、デザインを理解しているトップがいる会社は超一流の会社になっていることは間違いない傾向でしょう。
日本について言えば、フィジカルなもののデザインはよく考えられていますので、社会としてはデザインを理解する土台はあると思います。日本ほどデザインの重要性を理解している文化はない、という声もありますよね。ですがそれがデジタル上で実現しきれていない。個人的には時間の問題ではないかと感じています。
――最後に、日本のユーザーへメッセージをお願いします。
日本のユーザーさんはFigmaに対して情熱的ですし、それはとてもありがたいです。4~5年前のアメリカもそうでしたが「デザインはみんなのものである」という文化が日本ではあまり一般的ではありません。ですがその世界を知っている人にとっては、そういったオープンなカルチャーが楽しいし、効率も良い。日本のユーザーさんはその変化やムーブメントに共感してくれているのではないかと感じています。
日本のワークカルチャーを変えるには勇気と情熱が必要です。それがとても重要であり、難しい部分だとは思いますが、Figmaとしてはそういったアクションをサポートしていきたいです。オープンなワークカルチャーをつくっていくことで、日本でもイノベーティブな会社やプロダクトが生まれてくるのではないでしょうか。
なお、Configは6月23日(米国時間)まで行われ、グレイロック・パートナーのリード・ホフマン氏、Airbnb CEOのブライアン・チェスキー氏、Netflixデザイン担当副社長のスティーブ・ジョンソン氏、GitHubデザイン担当のダイアナ・マウンター氏、Adobe最高戦略責任者およびEVPのスコット・ベルスキー氏らが登壇する予定。