リモート環境でも再現性の高いプロダクト開発を Relicデザインチームの取り組み

リモート環境でも再現性の高いプロダクト開発を Relicデザインチームの取り組み
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 新型コロナウイルス感染拡大を受けリモートワークが広がりつつあるいま、通信環境、作業するモニターや椅子・机といった物理的な問題からコミュニケーションの取りかたまで、さまざまな課題に直面している企業も多いように感じます。チームで作業を進めることが多いとされるクリエイティブワークにおいて、企業はどのように対応しているのでしょうか。今回は、日本企業の新規事業開発やイノベーション創出を支援するための事業やサービス・ソリューションを展開するRelicのCCO・黒木裕貴さんとDesignerの高村香織さんに、Relicの事例を交えながら、アフターコロナを見据えたチームづくりについて紹介していただきます。初回は、リモート環境におけるプロダクト開発の課題と、それを解決するためのRelicの取り組みがテーマです。

株式会社Relic CCOの黒木さん(右)とDesignerの高村さん(左)
株式会社Relic CCOの黒木さん(右)とDesignerの高村さん(左)

 Relicでは新規のプロダクト開発において、プロダクトオーナー/エンジニア/デザイナーなど、チームメンバーとのコミュニケーションを重要視しています。そのためリモートワーク当初はコミュニケーション不足が懸念されていました。とくにコミュニケーション不足によって、チーム開発の意識が薄れてしまうことが心配されていました。

 そもそもなぜ、チームで開発をすることが重要なのでしょうか。

 私が所属するプロダクトイノベーション事業部では、「チームを作り、チームで作る」ものづくりを大切な価値観と定めています。個人のスキルに偏ったプロダクトである場合、再現性のある開発は難しい。そこで、さまざまなテクノロジーやデザインの専門領域を組み合わせ、ひとりでは作ることが難しかったプロダクトを実現することを理想としています。

 また、並行して複数のサービスを成長させるにはそれぞれのチームが自立していることが必要です。自立したチームでは、チーム内で課題を考え検証し、フィードバックも活発に行われるため、プロダクトも磨き込まれていくのです。

リモート下のチーム開発に影響を及ぼすふたつの価値

 そんなチーム開発の強みが、なぜリモートワークを前提とすることで薄れてしまうのでしょうか。

 2001年にアメリカのユタ州で発表されたアジャイルソフトウェア開発宣言では、チーム開発を支える4つの価値として「個人と対話」「動くソフトウェア」「顧客との協調」「変化への対応」を掲げています。この4つの価値のうち「個人と対話」と「動くソフトウェア」のふたつが、リモートワークの定着によってチーム開発に影響を及ぼすからではないかと考えています。

「個人と対話」の減少

個人との対話、いわゆるコミュニケーションについては多くのリモートワーカーが課題を抱えていると思います。

とくにデザイナーにとって、フィードバックをもらうことはものづくりの大切な要素。昨今のプロダクト開発においてデザインは、デザイナーだけでなくさまざまなプロフェッショナルとの協力により作り出されます。

弊社も、完成途中であってもフィードバックしあえるコミュニケーションの場を大切にしています。目的に沿ったアクションについて、意図した設計ができているのか。技術的に実装可能なデザイン、インタラクションになっているかなど、制作段階からフィードバックを活発に行うことを心がけています。

「動くソフトウェア」を伝える機会の減少

これをデザインの領域では「動くプロトタイプ」と置き換えることができるでしょう。近年、マイクロインタラクションなどのワードが注目されていますが、プロダクトの細部にこだわることがサービス全体の体験を磨き込むことになります。

リモートワークだと、マイクロインタラクションを実装するうえでの微妙なニュアンスにズレが生まれやすいことが懸念されています。その場にいれば身振り手振りで伝えていたようなアニメーションが、いままで以上に伝わりづらくなる。いわゆる「あうんの呼吸」的なものがオンライン上では難しくなるのです。そうなると、より一層イメージできる「動くもの」が必要になっていきます。

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