「失うものはない」 新卒で大賞を受賞したプランナーが2年分のメトロアドクリエイティブアワードを語る

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
2020/11/17 11:00

前年度“受賞”するも再度アワードに挑戦したワケ

 そんな巨大スペースを活用したアイディアとして中村さんが生み出したのが、中高生の運動部女子がジャージでもかわいらしく撮影することができる超巨大プリクラ「青春デカプリ」だ。ユニフォームを自由に着せ替えることができるバーチャル上の落書き機能を搭載するアイディアも、さまざまな部活にユニフォームを提供しているアディダスの特徴を上手く捉えている。

 この企画を生むうえで中村さんがとくに意識していたのは、ターゲットとなる、「スポーツ女子」が実際に行動を起こしてくれるかどうかであった。

「今回は女子中高生向けの企画と決まっていたので、彼女たちがこの巨大プリクラの前を通りかかったときに実際に撮りたいと思うかについては、アイディアを提出する最後の最後まで考えていました。

自分だけで考えていると、『最高のアイディアが思いついた!』と思うときもあれば、『こんな企画じゃダメだ』と落ち込むときもあります。だからこそ、客観的な意見はとても大切。社内のメンバーや先輩、また広告にまったく関係のない友人に意見を聞いてもらうこともあります。

その過程で思い出したのが、学生時代に夢中でスポーツに取り組んでいたとき、仲間との絆や結束力の強さは周りにも自慢したいポイントだったということ。その体験に背中を押され、このアイディアで進めていこうと思いました」

 第3回Metro Ad Creative Awardのプランニング部門で大賞を受賞した中村さんだが、実はその前年にも応募をしており、大学4年生ながら協賛スポンサー賞を受賞している。

 社会人となった昨年は「日々の業務も山積みで余裕がなかった」と言うが、なぜそのような状況でもアワードに再挑戦したのか。その大きな理由が、一見華やかにも見える“前年度の受賞”であった――。

 第2回で中村さんは、日本コカ・コーラの企画「運動する時にアクエリアスを飲みたくなる企画」を選択。これに対し、「なかなか買えない自販機」というアイディアを提示した。巨大なデジタルサイネージ型のタッチ式自動販売機でアクエリアスを購入しようとすると、購入者の年代などに応じてペットボトルがサイネージの中を飛び回る。そうやって縦横無尽に逃げるアクエリアスをタッチしたい一新で追いかけているうちに、楽しく体を動かせる仕組みだ。

 この企画が協賛スポンサー賞に輝いたわけだが、奇しくも同じプランニング部門で大賞を受賞したのが、全力ダッシュがコイン代わりとなる自動販売機「15m走自販機」。同じ自動販売機を活用した企画という共通点もあったため、「とにかくめちゃくちゃ悔しかった」と当時を振り返る。

「コストや実現可能性といったビジネス面まで考える視点が足りていなかった と気づきました。もっとシンプルで強い企画にしなければいけなかったですし、まだまだ改善の余地はあった。それがとても悔しかったんです」